体感とプラシーボ効果 その2 2stオイルの話



今回のお話はですね、ちょっとこのコラムシリーズの趣旨からズレるかもしれませんが2stオイルの件について

少々触れたいと思います。

この2stエンジンに必要不可欠な2stオイルってヤツは、燃えやすさとか潤滑性だとかパーツの耐摩耗性だとか

色々と基本要素がありますが、さすがに成分分析が出来るワケでは無いので、私の2stオイルに対する

「アプローチ方向」を書き連ねていきたいと思います。


まず、私の基本理念として2stエンジンに対する2stオイル、という物のスタンスを羅列してみましょう。


・自分のエンジン仕様に対する最低限度の「潤滑(耐焼き付き)性能」


・同時に各パーツの磨耗を低減する「耐磨耗性能」


・燃焼エネルギーの放熱、排熱を助ける「放熱性能」


・オイル粘度や配合物質による「フリクションロス低減能力」


といった感じになります。

これが上から順にオイルに求める性能の優先順位となっていますね。


ちなみに、密封性とかは2stエンジンだと大きくオイルの「質」に頼るものでは無い上、他の所の影響の

方がはるかに大きいので勘定には入れません。2stだとオイルの「混合量」にも影響されますし。

と言いますかそういった感じでオイルでトルクアップ、みたいな事はそもそもオイル性能に大きく

求める能力では無いと私は考えていますんで…

防錆効果も同様に、オイルに各パーツが漬かっている4stとは違い、燃えて無くなってしまう2stオイルには

大して求める物では無いと考えていたり。というかよほど質の悪い物でも無い限り心配する所では(略


あ、私個人としてはマフラー、チャンバーからから輩出される「スモークレス性能」とでも

言うのでしょうか、そういった排煙性?ってのもほとんど勘定に入れませんね。

何故かと言うと、排煙性能というのは2stである以上、マフラーやチャンバー内部に未燃焼のオイルが

溜まっていてそれが排出される事の方が症状としては大きく、それなりに劣化したり暖機やちょい乗りを

繰り返したマフラーやチャンバーでは「判断基準を作る事」がとても難しいから、といった理由があります。


これ、排煙性能を売りにしているオイルってのも世の中にはありますが、だからといって

他の性能が劣るか、なんてのはとても素人には一概には分からないので、これはある程度でも

オイルを語る為の判断基準にはしない、という事になります。

…これは後述しますが、「白煙を噴く」のと「オイルが燃焼していない」のとはイコールではありませんしね。


で、早速本題ですが…

とりあえずは一般的な「分離給油方式」に限って話を進めますと、まずこの分離給油というものは2stと

いったエンジンにおいてはちと非効率なモノであり、キャブやマニから吸われている

ねっとりとした液体の2stオイル分なんて、あまり綺麗に「噴霧化」ってされていないんですよね。


むしろ、マニホールドの内側を「液体がつたって滴り落ちている」といった状態であり、クランク

ベアリングに直接給油する方式を取っているスズキスクーターなんかは、長期間使うとクランクケース

内側にオイル分の焼けがまっ茶色になって残りまくる、というのもこれを裏付けています。

きちんと霧状になって噴霧化しているのであれば、生の液状のオイルがクランク室内に焼き付く程に

多量にくっつくワケがありませんからね。


が、スズキスクーターは分離給油である事のデメリットも考慮した上で、わざわざクランクベアリングへ

直接オイルを流しておく、といった耐摩耗性、安全性、耐久性に対してのシステムを付属させていると

いった事はかなり評価出来るかと私は分析していますよ。


ホンダも見習えば良いのに、とも思ったりしますが…皆さんもご存知の通り、ホンダ系2stスクーターの

オイルポンプはキャブのみへの給油ですし、ポンプ自体はケースに刺さっていて直接クランクケース内に

飛び出していたりしますが…古くなってオイルポンプの給油能力が低下してくると、ポンプのシールも

劣化してクランクケースにオイル溜まりが起こる事も多いですが、私はオートチョークのON故障と同じく

これって「ある程度」狙ってやってるんじゃ?と邪推してたりしますね(笑


元々クランクベアリングや大端部がぶっ壊れやすいのは承知の上でしょうし、その上で長期に渡る

メンテナンスフリー状態でも腰下への給油が「余分に」行われる、なんて考えても辻褄は悪い方向ヘは

向いては行きませんからねえ…

デメリットといえば始動直後に白煙を多く吹く、位でしょうか。


だからこそ、このポンプが劣化してクランクケース内に漏れる状態も結構起こりえるホンダ系スクーターだと

始動時の排煙はかなり多くなる事もザラにあるので、そんな劣化した車両だとオイルの銘柄を変えたからと

いって、マフラーからの排煙量の目視のみでは変化具合を判断しかねるんですよ…

全然アテにならないとは言いませんが、オイルを変更して排煙を少なくしよう、なんてのは元々の車体自体が

完璧にメンテされている事が大前提なので、「一般的」な車両でこれを語ってもほとんど無意味なんですね。


こういうのは何でも同じですが、「判断基準」となるモノがしっかりしていないと大きく判断を誤るというのは

多々ある上に場合によっては危険なので、目先の状況のみに囚われるのは良くありません。

…私個人としては排煙具合なんてよっぽどじゃないと気にしないのでどうでも良いですけど(笑


と、話がズレましたが、分離給油ってのはオイルポンプの進化やコントロール性能が優れているからこそ

一般市販車に採用されているのであり、基本的に2stレーサーだと混合給油が基本なんですよね。

これ、当然のごとくレーサーの場合は性能もさることながら、「高負荷に対しての安全性」

出来る限り大きく持たせる為に「混合給油」といった方式を取っているんですよ。

決して、「オイルポンプの駆動ロスが減るから」といった理由がメインではありません。

確かに市販車をレーサー化してオイルポンプを除外した場合、多少の駆動ロス低減にはなりますが

絶大な効果を求めてまでやる物ではありませんからね。

「オイルの噴霧化効率」を高める事こそが主目的です。


基本的には2stオイルというものはこういった感じだと私は分析していますが、一つの例外として

「改造範囲が厳密に定められているレーサー」車両の場合だと、オイルの銘柄やら混合比の

具合でエンジン性能に対してメリットを付与する場合があります。


ですが、これは前述の通り、

「オイル以外が常に大安定している良好なメンテナンス&運用状態である事が大前提」

でして、純粋にオイルそのものの特性の差を感じ取りやすく、なおかつ、改造無制限クラスでも無い限り、

レギュレーションで「チューン出来る範囲」というものがきちんと決められているので、「オイルの銘柄や

使い方」でわずかなアドバンテージを得ようとする為に行う、といった理由があるんですね。


「これ以上どこをいじくったら良いんだ!」というのは特にノーマルクラスでのジレンマ、とも言われる事も

多々ある話でして、そういったギリギリの状態なのであればオイルの「性能差」も勘定に入れますが、

言葉は悪いですが、そういうのは一般的な街乗り仕様で狙って行うのはあまり建設的では無い、と私は

考えていたりしますよ。


なお、レースだと速く走ることが第一目的ではありますが、それ以上に「安定性」というものが大切であり、

駆動系とかでも一発は速いが2〜3周でもっさりタレでラップタイムががた落ちする、なんてのは何の役にも

立ちませんし、これは短距離走のSS1/32mileでも、何本も走るとどんどんおかしくなっていく、というのは

「レーシングエンジン」としてはちょっとどうかと思いますしね。

別にレースでなくとも、峠でも街乗りでもある程度走ると調子がおかしくなる、というのは面白くありませんし。


レースにおいてのオイルの混合比にしても普通は危険な程にはオイルを減らしたりまではしませんし、オイルが

少ないからフリクションロス低減を狙える、ってのはある程度アンダーパワーなマシンだからこそ通用する

手法なのであり、負荷もパワーも大きな車両の場合だと安定性や耐摩耗性までもを「大きく」犠牲にして

オイルを減らす、なんて事は通常はありえないんです。

「レース」ってイメージだとギリギリのかっつかつ、といったイメージをお持ちの方も多いと思いますが

実際にはそこまでリスクを背負う方向性はよほどの理由が無い限りは行わない物なんですよね。


そしてこの辺からやっとメインのお話になりますが…

まず、一般的にはノーマル車には「純正オイル」が推奨とされており、基本的にはこれ以下のグレードの物を

使うという事はありえない、とお考え下さいな。

基本的に2stオイルというものは「値段に性能が比例」すると言っても過言ではなく、ノーブランドの

怪しい1リッターで数百円の物とかはフルノーマル車といえど使用するべきではありません。


…もちろん、乗りっぱなしでメンテもせず、壊れたら買い換えるといったスタンスの方であれば特に

問題はありませんが、そういうタイプの方だと元々オイル代をケチるなんて事自体がほぼありえないので

話が矛盾してしまいますが(笑


この辺はいつも掲示板等でも言っていますが、オイルをケチるのなら壊れても各部の劣化が早くても

文句を言うべきではなく、少なくともこのコンテンツを読まれている方であればいつも乗りっぱなしで

暖機も一切せず短距離走行を繰り返してエンジン内部にカーボンを溜め、マフラーやチャンバーには

生オイルをたっぷり貯金している、なんて方はほとんどおられないと思いますが、安物オイルだとその傾向は

さらに強まっていく、という事が大きいのはもはや言うまでもありません。


が、ここで一つ題材にしたいのが、レーシング用途的なお高い2stオイルなんですよ。

こういうのは分離給油用でもそれなりのお値段がしますし、そこまでのグレードだと混合給油で使っても

全く問題ないといったクオリティの物がほとんどです。


そして、こういったオイルを原付1種&2種クラスの2stノーマルスクーターに使用した場合、人によっては

「いきなり白煙が多くなった」とかの感想を持つ方もおられるみたいですが…

これ、レーシング用途とまでは行かなくとも、混合給油専用品でも無い限りは普通に分離給油オイルの

グレードを上げた所で、そんな事が「極端に」起こるとなればその時点でおかしいんですよ。


これは「オイルが悪いのではなくメンテが悪い」からこそそうなってしまうのであり、一応の

分離給油用途であれば粘度がねちっこすぎて噴霧化しづらいワケでも無いのにおかしくなる、となれば

いつものクチで点火力が極端に弱いとか、マフラー内部がカーボンだらけであるとかそういった二次的

要因があるからこそ、なんですよ…ってかそっちの方が本当は「一次的」な要因ですけどね(笑


前述の通り、オイル単体での性能を判断しようとすれば元々の車両コンディションが完璧に近くないと

絶対に不可能ですから、こういうのもある意味「レーシング的な高級オイルは燃えづらい」とかといった

イメージが先行しており、それによる悪い意味でのプラシーボ効果であるとも言えますからね…


あ、語彙的にはこういう「効果はあるのに心理的に効かない」と思っていて実際の効果を全く感じられて

いない場合、もしくは効果が無いのにマイナスの影響を感じる、ってのは「ノーシーボ(ノセボ)効果」

って言うはずなんですがそこまで突っ込まなくても良いかなとも(汗


なお、「正しい意味で」高性能なオイルという物は、



オイル自体が「燃えづらい」のではなく



「燃えカスが残りやすい」といった方向性



が強いと私は分析しています。

と、ここでちょっと一例を出してみましょう。


FNエンジンで1000km走行
これはFN仕様のライブDioで、スーパーゾイルを100%ナマの状態で分離給油使用した状態です。

仕様用途はもちろんサーキットのみ、暖機もしますしセッティングがおかしいという事も無い運用で、あえて1000km程度もの長期に渡ってメンテを行わずテストしてみた写真ですが。

どう見てもカーボンの堆積は多めであり、「通常運用ならば」ここまで放置するとレーシングマシンとしてちと問題アリのLVにまでなっていますね(笑


あ、ちなみにレーサーだと1000kmもメンテしないというのは普通はありえないLVなので、その辺りは

お間違え無き様にお願いします。


ご覧の通り、ピストントップ中央部はまだカーボンが堆積しきっておらず、焼け自体もちょっと分かりづらい

状態ですが、掃気流がピストンを綺麗に舐めてくれない無加工エンジンだと中央部より温度の低い

ピストン外周部に近い方はかなりカーボンが溜まってしまっています。


さすがにこんな状態だとオイル管理としては良好とは言えませんが、これは昔、「燃えづらい」といった

噂のあったスーパーゾイルを通常のオイルにブレンドするのではなく、あえて100%給油してみるとどうなって

しまうのか、といった事を実験する為に行ったのですが、やはりと言いますかFN仕様のノーマルエンジンに

対してはメンテの頻度は多くしないといけない、といった結果になりました。


で、肝心のフィーリングや性能は、これだけカーボンが溜まりがちならイマイチであったかと思われると

思いますが、実際には全くそんな事は無く、吹け上がりも軽い上にストレートエンドでの回転数もわずかに

向上した上、ラップタイムにもわずかながら反映されたんですよ。

かといって、キャブセットが普通のオイルと変わらない状態でも、走行中にぐずついたりカブったりの

症状は一切ありませんでした。


さすがにエンジン始動直後は多少排煙が多くはなりましたが、走行中に煙をもくもく吐くなんて事は無く、

こういった結果だと上記の通り、少なくとも「極端に燃えづらい事は無い」とも言えるんですよ。

単純に、燃えカスを上手く焼き切る程の温度がノーマルエンジンには無いだけであり、ノーマル程度の

エンジンに対して使ったオイル、この場合は生ゾイルが燃焼時にちゃんと燃えていないのであれば

走行中に白煙を吹き、マフラー末端には生のオイルが付着しないとおかしい訳でして。

こういう状況は「燃えカスが残りやすいだけ」であり、燃焼しづらいのでは無いという事です。

(※上記の写真のカーボンは乾いています。燃焼状態が悪いとウェットカーボンになるのが基本ですね)


…さすがにFNマシンでマフラー末端で生オイルが付着する、というのは完全混合用用途のお高い

オイルを30:1とかで使った場合でしか起こりえず、オイルポンプの不具合やシール漏れでも無い限り

分離給油用途のオイルがおもいっきりエンジンの調子を崩すなんてありえない、と断言しても良いと

私は考えていますよ。


このスーパーゾイルにしても、「オイル」としての最低限度の性能も持ち合わせていないのであれば

説明書通りに「半分だけオイルに混ぜて分離給油する」といった使い方で無いともっとおかしくなっても

良さそうですが、100%ゾイル給油でも調子崩して走れないとかそういうLVにはまずならないですしね。

逆に、レーシングエンジンに100%混合オイルとして使っても全く悪くは無く、そこそこの高評価で

私は気に入った、という事もあったりしますよ。


それと私、昔ノーマルエンジン車にカストロールA747を完全混合、30:1で街乗り用途に使ってみた

事があったのですが、多少マフラー末端は湿ることがあっても、全く走れないとかそういった事は

起こりえませんでした。

本当にオイル分に着火しづらく燃焼も真っ当に行えない物なのであれば、カーボンや生オイルが

どうこうという前に、カブって走れなくならないとおかしいんですよ。


これもさすがにずっと何千kmも運用していくとカーボンも溜まってきて調子を崩すことがあるかとは

思いますが、ある程度チューンしたエンジンの場合だとレーシング風味どころか完全なるレーシング用途

限定の混合給油専用オイルでも、走行に関しては全く問題は無いLVであったという事も捕捉しておきますね。


それとダメ押しでもういっちょ、SS1/32mile用のマシンで、「その日きちんと走れている状態で、何の問題も

無い状態から」オイルの混合比「のみ」を50:1から30:1近辺までテスト的に濃い目にした時、13500rpm変速で

あったエンジンがいきなり11000rpm程度で点火リミッターがかかったかの様に「バババババ!」とぐずついて

走れなくなる現象に遭遇した事がありますが…これは実に単純なトラブルでして

CDI駆動用のバッテリーの電圧がかなり下がり気味だったという(笑

普段は14V程度を最低でもキープしないといけない物が12.0V位になっていたんです…

それまではちゃんと走れてはいましたが、点火電圧的にギリギリの状態であったという事ではありますが(汗


完全DC点火の場合、点火力はモロに電圧降下の影響を受けるので、吸入混合気内に含まれるオイルの

量自体がちょっと多くなっただけでも真っ当に「着火しきれない」といった状況に陥った訳で。

だからこそ、多少グレードの高い程度のオイルであからさまに調子を崩したりするのはメンテ等も含め

エンジンや場合によっては点火系、車体自体の方に不具合が出ている事の証明にもなりがちなんですよね。


なので、「点火力が衰えてきているエンジンに、安物オイルを入れて排煙を誤魔化す」なんてのも

本末転倒の極みである、という事ももはや私がご説明するまでも無いかと思いますよ…

そんな事を行ってもカーボンの堆積具合が改善される訳がありませんし、誤魔化しLVの事を行う前に

メンテにきちんとお金と手間をかけましょう、という事に他なりません。


そして最後にオイル関連でおまけの捕捉をもうひとつだけ。

上記でもご説明しました様に、2stオイルってのはカーボンが溜まる、というのはオイル特性を除いても

ある程度はやむを得ないのですが、これって特にピストントップ部に堆積するカーボンというのは


あまりに溜まらなさ過ぎてもおかしい


んですよね。


エンジンってのは吸入混合気の完全燃焼が行われるに越した事はありませんが、だからといって

ピストントップが一切カーボンが無くぴっかぴかの状態だと完全燃焼どころかちょっとオーバーすぎで、

通常用途での運用を行っている場合はちと不味い部類に入ると私は分析しています。


これ、前述の様にそれなりのオイルを使っているのであれば、いくら「燃焼」自体は完全に行われて

いたとしても、燃えカスが一切ピストントップに付かないという事であれば燃焼温度が異常なまでに

高いとか点火時期が仕様に対して早すぎるとか圧縮比が異状とかスキッシュ設計が無茶苦茶だとか、

そういった危険要素があるといった可能性を疑ってかかった方が良いでしょう。


頻繁にメンテを行うレーサーエンジンでも、「ある程度」はカーボンが溜まらないとおかしいんですが…

プラグでも、街乗りにおいてわずか数km程度の走行ではオイル分の燃えカス、すなわちカーボンすら

電極や碍子部分にはほぼ付着しないですよね?

となれば、「カーボンの溜まりづらいオイル」を短時間、短距離走行でエンジンの調子を見なければならない

場合が多いレーサーに使用すると、

短時間ではプラグ等に焼け色が付かず、「焼け具合=エンジンの状態」が判断出来ない

という事が起こってくるんですよ。

掃気ポートをいじくっているエンジンなんかだと、ピストントップの焼け具合で掃気流の具合を判断したり

するのは定番中の定番ですしね。


なので私、基本的にレーサーだとピストントップのカーボンなんかは完全に取りきったりはしない事もあり、

プラグにしても「セッティング用」はある程度カーボンが付着している物を使っていて、間違っても

新品未使用のプラグを使ってセッティングしたりはしないんですよ。

そんな事したって「焼け」なんてなかなか出るものではありませんからね。

金属肌の見えているプラグで焼け色判断を行うと間違う事もありますし、焼けを判断する前にどこかが

壊れてはそれこそ意味が無いので(笑


だからこそ、いくら街乗り用途のエンジンでもあまりにカーボン堆積が無い状態だとエンジン自体の

調子が見られないどころか、どんな使い方をしようがピストントップにカーボンが溜まりづらいというのは

オイルのみならず何かの危険信号である、と考えるべきなんです。

これ、距離を走ってもピストントップにほとんどカーボンも焼け色も付かないとなれば、かなりの異常な高温で

エンジンを運用している、と言い換えても良いでしょう。

そんな状態を維持しているとそう遠くない日に間違い無くぶっ壊しますよ(汗

(※ピストントップにはある程度カーボンが溜まり、シリンダーヘッドにはほぼ付かない、といった感じが理想かとも)


…致命的なピストントップのトラブルを起こしたことのある方であればご存知かと思いますが、そういった

場合だとヘッドやピストントップはカラッカラに乾いている上にアルミ地肌が見えている位になっている、と

いうのも経験があるかと思いますしね。

ピストントップがカーボンで覆われてるのに真ん中だけへっこんでるとか穴が開いてるとかそんな事は

「安定運用していた状態」から一気に無茶苦茶な変更を施さない限りまずありませんので…


中央部の四角い点は暖機用プラグを間違えてアースフックがヒットした跡で(略
ここで一例ですが、これは私のSSマシンの走行後のピストントップになります。

これは元々新し目のピストンを使って50m走を数十本走った状態ですが、走行距離としては「数km」のLVになりますね。

それでもうっすらとカーボン、とまでは行かなくとも全体的な焼けは出ており、全力全開のみではなく慣らしも多少は行ったので全体的に黒っぽいですが「色」は悪くはありません。

(※当然ですがこれがベストな焼け、って意味ではありませんよ)


十分とは言えない暖気状態の上、短距離のみ全力で走ってすぐエンジンを切るといった過酷な環境での

ピストントップですが、それでもこの程度は焼け色は出ている、といった感じになっています。

と言いますか、SS用途の場合はピストンを新品交換した場合はともかく、基本的にカーボン堆積が少なく

焼けが非常に出づらいので、私はほとんどピストントップの掃除なんか行わない位ですよ。

…掃除が必要な位ピストントップにカーボンが堆積するともうピストン自体交換時期ですんで(笑


そもそも、元々レーシング用途的な高級2stオイルってのはそういった事もふまえ、元々のオイルの

特性として、「短時間の運用でもちょっとはカーボンが溜まる仕様」になってたりする物もあるんです。

ぶっちゃけるとこれを知らずに「レース用途オイルはカーボン溜まりまくるので燃えづらいんだ!」なんて

言ってても始まらなかったりするんですけれどね…


なので



ピストントップに


カーボンがある程度溜まるという状態は


エンジンの「調子を見やすく」する為に


メーカー側が「オイルの特性」として


「あえて」付与している場合も多い



んですよ(笑

だからこそ、排煙がどうこうとかでオイル自体の特性や性能ってのは一概に判断出来ないと

言っても良いんですよね…

厳密に言えば同一使用条件下でパーツの減り具合を比較するのが一番無難かと私は考えています。

ストリート用途の乗りっぱなし専用オイルなら白煙なんて出ない様な味付けが「当然」とも言えますんで。


結局、白煙が出ないからといって、イコールで「燃えやすいオイル」ではないんですよ。

前述の通り、オイルが燃え切らず本当に混合気の燃焼不良が頻繁に起こるのであればエンジンが

バラついたりして明らかにおかしくならないと「おかしい」んですね。


とまあ、オイルに関してはかなり話が飛んだ上にうんちくも混ぜてしまいましたが、なんのかんの言っても

一つ目の例題のホットイナズマとは逆に、


「用途にそぐわない」と「イメージで思い込んでいる」事が


悪い方向性でのプラシーボ効果(ノーシーボ効果)になっている事がある


という点をお伝えしたい訳なんですよ。

そもそも、レーシング的なオイルが街乗りに向かない、なんてのは、失礼ながら上手くオイルを使えない人が

先入観と一度二度の経験のみでモノを言っているだけなのでは、と私は解釈していますね。

もっと言うなれば、完全混合用途の高級オイルをノーマル風味車で運用してみた事とかはあるんですか?と。

排煙具合のうんぬんだけじゃなく、正常な車両にそういうのを使ってだだカブりで走らない、なんてのは

ほぼ起こらないんですよ。

あるメーカーの分離給油用途最高グレードに抜き換えたからといって、いきなり始動困難になったり

バラバラいって走らない、なんて事に遭遇するなんてのは「通常&正常ならば」まずありえないんです。


で、これもいつものクチですが、レーシングエンジンであればパーツそのものの耐久性やらは納得の上で

あえて削って性能を得ているのですからそういった所がノーマルに比べて劣化しやすいのは当然ですが、

だからといってエンジン自体への負荷や熱に関しては街乗り車でもレーサーでも気の遣い方、というものは

大差無いんですけれどね。

むしろ、長時間エンジンを稼動させる街乗りの方がシビアな部分「も」ある、と言っても過言では無いと

私は考えています。


実際に、「パーツ自体の減り」なんかをある程度のスパンで比較したりする場合、オイルをケチって

運用していた街乗り車なんかだと、最低でも純正の最高グレードのオイルを使って運用していた

物と比べると、明らかにシリンダーの内径が広がっていたり、リングの磨耗が大きかったりする事も

珍しくないんですよ。


ノーマル車でも、シリンダーの内径なんかは0.01o減らそうと思えば1万km程度は走らないと減って

しまわない、という感じですが、これが安モンオイルで酷使していたりすると5〜6000kmでも同じ位にまで

減っているなんて事もありますし、リングも前後幅の計測や同一のシリンダーに入れて合口クリアランスを

比較した場合、明らかに磨耗が激しいといった事もありえるんです。


こういうのは「きちんと」比較しないとなかなか気付くものではありませんし、普通はこんな面倒な事までは

やりませんからあまり実感が沸かない方も多いと思われますが、ホンダスクーターで弱めの部分である

コンロッドの大端部なんかも、明らかに手で触って分かる位に横方向へのガタ具合が異なるってのも

ありますんで。



なので、



必要以上にオイルをケチる事は



大切なエンジンの各部パーツの



磨耗具合の増大と直結する



とも言えるんですよ…


これ、カーボン堆積であればケミカルアタックで掃除するなり何なりで取ってやれば済みますが

「減ってしまった金属パーツを元に戻す事」は新品交換しない限り物理的に不可能です。

目先の値段やら白煙具合とか、そういった事に目を奪われてエンジンの寿命自体を縮めても

構わない、というのであれば話は別ですが、少なくともココを見られる様な方であればそんな事は

あまり進んでは行われない、と信じたいところではありますね。


なお、オイルを「今より」高グレードにするのがどうしても嫌なのであれば、今使っているオイル自体を

100:1程度でも良いのでガソリンタンクに半混合で混ぜる事をお奨めしたいです。

たった100:1程度の「混合給油オイル」の+でもその効果は結構大きく、混合給油を行ってオイルを

ジェットから吸い上げ噴霧化させる、といった方向性はそれだけでもオイルの潤滑効率等を上げて

行ける物なので。


…が、こういう事を敬遠するのであればエンジンをノーマル以上にパワーUPさせてなおかつ酷使する、と

いう事はあまりやらない方が身の為でしょう。

もしくは、潤滑トラブルやらパーツ劣化の速さ等も全て覚悟の上で行うべきですね。


ちなみに、リッター2000円以下の安物オイル(私はこれ位が安物の基準です)でも、それを完全混合で

使ってみると分離給油使用とは結構違った高効率の潤滑性能を得られたりしますよ。

混合給油というのは本来はこれこそが2stエンジンに対してのベターなオイル供給方式であり、

分離給油とは想像を絶する隔たりがある、といった事も覚えておかれると宜しいかと思います。


これは以前どこかに書きましたが、大昔ノーマル風味車に100:1程度の薄いオイルを完全混合のみで給油し

壊れるのを覚悟で家の周りをぐるぐる走ってみましたが、10km以上走っても全く問題が出なかったと

いった検証も行った事があったりしますよ(笑

全開高負荷でずっと走るならさすがにどこかがぶっ壊れるでしょうが、極少量のオイルでも混合ならば

意外といけるもんだなと思った実験でしたね。


もう一つ、昔カストロールのスーパースポーツといった1リッターで1000円しない安物を分離給油で

使って、チャンバービッグキャブ等の峠仕様車で峠を毎週ガンガン走っててたまに軽い抱き付きを

起こしてた事があるんですが、これを40:1の混合給油で使ってみるとおかしなトラブルは一切合切

無くなりましたからね。

これはカストロールブランドに騙された私の若き日の体験談ですが、これを身をもって体感したからこそ

混合給油の効率の良さ、という物に気付けたんですけれど(笑


…それと、もはや語るべくもありませんが、ホンダスクーター系統だと元々クランクベアリングやコンロッド

大端部がその設計のおかげで耐久性が低めである、というのは周知の事実ですが、こういったホンダ系の

エンジンを走らせるにあたり、オイルをケチるなんてのは正直、正気の沙汰とは思えないです。


ホンダコンロッド大端部の焼け ここで一例を出してみますが、これはホンダクランクの大端部が過剰に「焼けて」しまっているエンジンです。

社外品クランクならコンロッド大端部に潤滑用スリットが切られているのが基本ですが、純正だと何故かスリットが無いので高負荷を与える場合だとかなり不利になるのは自明の理ですね。

なお、純正新品のクランクでろくに慣らしもせず高回転高負荷で使用した場合でもこうなる事はありますよ。

フルノーマルならともかく、基本的にはこういった所も「慣らさないと」余計に不味いんですよね…


と、簡単な例ですが潤滑用スリットの存在しないクランクシャフトだとこうなる場合がある、という一例です。

一発で大端ベアリングがおかしくなってコンロッド大端部が焼き付きが真っ当に動かない、というのは私も

数回しか見た事がありませんが、ここまで焼け色が付いているとその後の寿命は確実に短くなってしまっています。

…ここだけはヤマハ系の50ccと比べるとホンダ系の方がゴツいのに、実際のトラブル率はホンダ系が

かなり上回っているというのは不思議ですが、ホンダ系スクーターはコンロッドの大端部も結構弱めで

劣化による「横ガタ」も大きくなりやすいのでハナから注意するに越した事はありません。


クランクベアリングはもはや「当然」としても、コンロッド小端部も場合によっては青く焼けてくる場合も

ありますからこういう症状が出てくる前にせめてオイル「程度」には気を遣わないといけないんですね

ちなみにいつもヤマハを引き合いに出しますが、同程度の「気の遣い方」であればヤマハの方が

はるかに頑丈で長持ちするというのは純然たる事実なので、ある意味ではホンダ系スクーターに

乗っている方はヤマハ系スクーターに乗っている方の運用方とかスタンスを鵜呑みにするのは不味い、

と言い換えても良いと私は考えていますよ。


…こういう所が元々弱くて壊れやすいというのを知っているのであれば、オイルの品質で多少でもその耐久性を

伸ばしてやるのは自明の理ですし、文字通り


「致命的」な部分が弱い事を知っているのにオイルをケチっている


というのは私からしてみれば全くもって理解が及ぶ範疇ではありませんよ。


それならクランクベアリングが突然壊れても文句を言うべきではない、と考えていますし、そもそも元々の

出荷状態や運が悪いとフルノーマル+オバチャン乗り+純正オイルでも1万km持たない事もある、といった

車両をかっ飛ばしたり場合によってはいじくったりして酷使しているのにオイルケチって壊れたら嫌だ、

なんてのは無茶苦茶ですからね。

これはホンダ系2stスクーターならDio系に限らず、タクトでもリードでもジャイロでも同じ事ですよ。


ただ、私みたいな人間がこういった事を書いているのをお読みになって初めてこういう事を認識される

方も0では無いと思いますんで、「特に」ホンダスクーター乗りの方は明日からでもオイルの質には

ちょっと気を遣ってみるのも良いのでは、と私は考えていますよ…

これがヤマハ系なら元々腰下は頑強なのでそうそう壊れたりはしませんが、ホンダ系はそうは行きませんので。


どこかにも書きましたが、純正オイルというのはあくまで法定速度+α程度の用途を想定して作られて

いる物ですが、ホンダ系スクーターだとそれでも足りていないフシがあり、ノーマルでも常にかっ飛ばす方なら

「最低でも」純正の一番上のグレード品を使うべきだ、と私は推奨します。

(※そもそもホンダ2stスクーターはあまり長持ちさせる様には作ってない、と言ってしまえばそれまでですが)


純正最上グレードだと社外のオイルメーカーが出している一番下のグレードとかよりマシですし、ああいうのは

ブランドの「イメージを」売る為に安価なグレードをラインナップしているだけであり、いくら一流オイルメーカー

とかの品でもリッター1000円程度の物だと大した事無いんですよ(笑


分離給油用途ならばホンダならウルトラGR2、ヤマハならオートルーブスーパーRS程度が、ここを見られている

皆さんには「最低限度のLVである」と私は思いますしね。

ちなみにスズキCCISはノーマルはともかくハイチューンで使った事が無いので私は分析してません。

(CCISのタイプ2ってのは良さそうな気もしますが)


あ、これ書いてて思い出しましたが、私は個人的にはカストロールはA747を除いて嫌いだったりします。

混合用で植物油のA747はロングランの高性能品で私も好きですが、それ以外のラインナップは

中間グレード的な物が存在しない上、分離給油用最高グレードのTTSでも明らかに性能が足りて

いないと私は判断していますね。(※現在の最新型は知りませんがもはや使う気になりません)


これこそ「ブランドイメージ」が先行している悪い例だと私は受け取っていたりしますが…本来なら私あまり

オイル銘柄でどうこう、とは言わないのですがカストロールは止めた方が良いです、と個人的経験より

釘を刺させて頂きますね。現代の10インチハイグリップでいうTT92みたいなモンです(笑

そもそも「カストロール」の語源であるひまし油ってA747とR30にしか入って無いでしょ、と(爆


なおこれもある意味プラシーボ効果で、「最高峰のA747がロードレーサーにも指定されるLVの良品である」と

実感していると他のグレード品も良さそうに感じてしまうんですが、この場合はそれは大間違いだという事で…

安くて良いモノなんてそうそうある物ではなく、そんなモンが多量に世の中にはびこっていたら

市場が崩壊してしまいますよ。そういうのはたま〜にあるから価値があるのです(笑

そんなのが跋扈していると「高けりゃ良くて当たり前」って前提すら成り立たなくなってくるので…

「高いけどよろしくない」というぼったくり品はいけませんが、本当に良い物が認められなくなってしまう

世の中なんて私は嫌ですけれどね。


なので私、人に2stオイルの事を聞かれた場合、「オイルって何が良い?」と単純に聞かれても返答に

困るというのが正直な所でして、車両自体の使い方や最低限「何を求めたいのか」によっても答えは

変わってしまいますが、とりあえず安いのはやめときましょ、というのは定番になっています(笑


さて次回もこのコラムの続きになりますが、内容は「純正IGコイルとプラグ」のお話となります。

とはいえこれはちょっと特殊性のあるホンダ用の物について、なんですが。

何故にヤマハとかじゃねえの?という点はご覧になれば分かりますんでよろしくです。


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