さてさて今回はですね、今までも何度か文中にちりばめて来ましたが、これまでは明確な解説を行って
いなかった件、駆動系の「アクセルOFF時のシフトアップ」といった動作ついて解説してみたいと思います。
とはいえ、これだけではちょっと表現として分かりづらい点があるかと思いますので、そのあたりも解説しつつ
お話を進めて行きましょう。
※今回もそれなりに長い為、ページ内リンクの目次を付けておきます。
・「アクセルOFFシフトアップ」とは何か
さて、まずは表題通りのこの現象についてですが、駆動系の「シフトアップ」というのは、
ベルトがせり上がって行き変速比が低下していく状態を指しています。
アクセルを開け、停車状態から加速を行う時に、駆動系にて起こっている一般の加速側動作と
言う事になりますね。
基本的に、加速側の駆動系の動作は下記の様になっています。
ドライブ側ベルトがせり上がりベルトかかり径が増大し
ドリブン側ベルトは落ち込んで行きベルトかかり径が減少していく
加速時には
といった一連の動作が行われていますが、これにより発進時には3.0とかだった変速(減速)比が
2.5、2.0、1.5…といった風に減少していきどんどんハイギヤに移行していきますね。
これについては前回&前々回のコンテンツにてご紹介した「変速比の変化」となります。
と、ここで一つ考えてみて下さい。
アクセルを開けていく加速側はともかく、走行中にアクセルを戻した場合は一体駆動系は
どういった動きを行っていると思われますかね?
これはですね、一概に「アクセルOFF」にした状態といっても、色々な状況がありえるので
加速中のアクセルOFFにて代表的なモノを羅列してみましょう。
1:全開発進の直後にアクセルをOFFにする
2:全開加速中にアクセルをOFFにする
3:最高速状態でアクセルをOFFにする
なお、ブレーキは一切かけないものとし、アクセルのOFFのみを行った場合であると仮定します。
が、最高速状態は多少話が違いますが、後述しますが発進と加速中もある部分による影響が
大きいだけで、動作の方向性に大きな差がある訳ではありません。
要はこういう「加速中、走行中にアクセルを戻すとどうなるか」と言う事で、これはもう
タイトルがすでにネタバレになってますが、実にタイトル通りで
加速中にアクセルをOFFにした場合
駆動系は「変速が進む方向」、
すなわち「シフトアップ方向」への動作を行っている
と言う事なんですね。
・「アクセルOFFシフトアップ」の動画
ちなみにカメラの固定方法に苦心したあげく、ベルトしか見えてねえという始末ではありますが
「上側ベルト」の動きに注目して動画をご覧下さいませ。
と、まずはこちらをご覧下さい。
「1:全開発進の直後にアクセルをOFFにする」といった状態ですね。
発進から半クラが終了する瞬間までアクセルを開け、すぐにアクセルをOFFにした状態になります。
アクセルOFF時にはベルトがずるっと移動しているのが分かるかと思いますよ。
…ちとエンジン冷え気味でカブってるのはご愛嬌って事で(汗
達してはいないので、アクセルOFFと同時に一瞬シフトアップした駆動系が、アクセルを開け直さずとも
また元々の最小変速状態へ徐々に戻って来ている事も分かるかと思います。
が、この「一瞬の戻り」は発進直後のアクセルOFFの場合にのみ起こる状況なので…アクセルOFF時の
シフトアップ具合とはまずはこんな感じのモノだ、と言う事の把握としてどうぞ(汗
全体を見れるとすれば「ベルトかかり径(変速比)」はかなり変化しているんですよ?
…実験車両が悪いのでベルトの上っ面しか見れずに視覚的には分かりづらくこの辺りはご勘弁頂きたいですが
ヤマハ車とかでやれば分かりやすいと思いますね。
揺れ動いている時がありますよね?
そこから走行負荷をかけると正常にピンと張っていき、真っ当な仕事をしていますね。
後、クラッチインじゃなくミートの瞬間、これもちと分かりにくくはありますが一瞬ベルトがたるみ気味に
なっているのも見て取れます。
ドライブとドリブンのベルトを張る力同士がほんの一瞬崩れるクラッチミートの瞬間では、ベルトも
ほんのわずかではありますが動作不良になっている、とも解釈出来ますね。
次に、発進からある程度低速での走行中、そして全開加速中からのアクセルOFFですが、こちらは
アクセルOFFシフトアップの直後には、発進直後の様な「変速比の戻り(シフトダウン)」は無いといっても
いい常態になるんですよ。
これの理由はもちろん後述しますが、ヒントは「高回転なWRの遠心力は一瞬では消えない」と言う事です。
ではでは先に動画をどうぞ。
ある程度の速度まで来たらアクセルのみOFFにし、その後もう一度アクセルを開け直し、戻した瞬間で終わりです(笑
なんか惜しい所で切れてしまっていますが、先程のクラッチミート直後の状態からのアクセルOFFと、実際の加速時のアクセルOFFの違いをご覧下さいませ。
…私のデジカメの能力では動画は30秒しか連続撮影出来ないので変なトコで切れてるのはご容赦下さい_| ̄|○
が、一応これが「2:全開加速中にアクセルをOFFにする」といった状態になります。
していますが、ここでははっきりと駆動系のシフトアップが見て取れるかと思いますよ。
タコメーター等からの分析では、最大変速の6割程度まで加速していた所から7割程度までシフトアップしていると
いった分析結果になっています。
(一応、最後の最後でもアクセルOFFシフトアップは微妙〜に写っています)
行われてシフトダウンへ、つまり変速比が大きくなる方向へと駆動系の動作が行われていますね。
基本ですが、駆動系のキックダウンというのはアクセルを開け直した瞬間に起こっていると
いう事が目視で分かると思いますよ。
「アクセルを戻した瞬間にキックダウンしているのではない」と言う事ですが、これは当然でアクセルを
戻した瞬間はシフトアップが行われていますんでね(笑
走行中のアクセルOFFではキックダウンもシフトダウンも行われていないと言う事になります。
次に、もう一つ似た様な状態での動画をどうぞ。
で、この「4回目」の動作に着目して頂きたいんですよ。
「アクセルを開け直している量が少ない(全開ではない)」が、「その後のアクセルOFF時のシフトアップが大きい」という状況が起こっていますね。
動画では無茶苦茶分かりづらいと思いますが、実際の動作はそうなってると言う事でひとつ(汗
で、これは何故か、と言いますと…これこそが「トルクカムの溝角度」による「トルクカムの効き」の違いが
加速側ではなく、アクセルOFFのシフトアップ量に影響していると言う事なんですよ。
アクセルOFF/ONを行っていますが、ここにミソがあります。
この実験時に使っているトルクカムは「45→60°溝」でして、この4回目のアクセル操作は「45°溝」の
部分で行っているのですが、これについては後述しますのでそれまでに何故そうなるのかの理論を
考えてみると面白いかと思いますよ。
ちなみに、他のアクセルOFFは全て60°溝部分にて行っています。
(溝角度に感してはクレアカムと角度こそ同じものの、他の部分で大きな相違があるモノを使ってますが
さすがにこれは詳細は非公開と言う事でご容赦下さい)
どうあってもカメラのマウントや能力等の関係でまともな動画が取れなかったので、これについては後に
理屈で捕捉しますのでそれでご勘弁をば(汗
・何故アクセルOFF時に駆動系がシフトアップするのか
何故に起こりえるのかをご説明していきます。
また以前と重複しますが、ここでも以前のコンテンツにある内容、そしてベルトを「張る力」と「引く力」を
混同しているとワケが分からなくなるので、性急な理解は避けてじっくりとお読み下さいませ。
「加速中」の駆動系の動作と力関係を記してみました。
・ドライブ側でベルトを引く力=クランク軸トルク
・ドリブン側でベルトを張る力=「引かれている」トルクカムとセンタースプリング反力
実際にはWRガイドの角度やランプ角度により、WRの遠心力自体がドライブ側でベルトを張る力に
反映される効率も変わってきますが、これらはとりあえず置いておかないと頭が混乱します(汗
今の論点はそこではないので…
「プーリー外側に動き続けようとするWR」が常に存在する、という事です。
もちろん、アクセルが一定での巡航時でも、WRの遠心力はドリブン側でベルトを張る力とバランスが
取れた状態で釣り合っている「程度」にはプーリー&ランプに掛かっていますよ。
各部の力関係はこうなります↓
加速中にアクセルをOFFにしたからといって、エンジン回転数ってのはいきなり0になる訳では
ありませんよね。
したがって、WRに掛かっている遠心力はアクセルOFFでも持続するんです。
これはある意味惰性で引かれている状態なので、トルクカムの効きはほとんど発生しません。
なので、自動的にドリブン側でベルトを張る力はセンタースプリング反力のみとなり、ベルトを
「張り切れず」に、WRが外側へ飛び出してしまうんですよ。
反力にてベルトを「張らせつつ」、変速比減少方向へ「シフトアップ」してしまうんです。
WRが遠慮無く飛び出してしまう、と言う事ですね(笑
それ以上のシフトアップは無い…と思われるかもしれませんが意外とあったりします(汗
無茶なハイスピードプーリーを入れたりしている場合、実走行では使い切れていない所までシフトアップが
起こってしまって、ヘタをするとベルトがプーリーから飛び出しているなんて事も現実としてあるんですよ。
プーリースライド量等を計算していけばすぐに分かるかと思いますが、実際のベルトかかり径ってのは
目視でプーリーを見る程には使っていない場合がほとんどなんです。
使っている「範囲」というのは「アクセルOFFシフトアップが原因」と言う事がザラにありますので。
マジックで引いた線が結構外側まで消えていても、実際の走行ではそこまで使っている訳ではなく、
アクセルOFFシフトアップで本来使ったトコより大きくマジック線が消えてるだけ、と言う事ですね。
これを勘違いするな、というのはちょっと難しい事ではありますが、そういった事も現象として起きているのが
「駆動系」という死ぬほど難しいモノなのだ、と認識して頂ければと思います。
・アクセルOFF時のシフトアップ「量」の判断
点についてご説明したく思います。
そんな事どうやったら分かるんだよ!と思われるかとは思いますが、これはちゃんと解明する方法が
存在するんですよ。
が、これは前回や前前回のコンテンツの、「ベルトかかり径から導き出される変速比」と、「駆動系の
ユニットスライド量」を、ドライブ&ドリブン双方共に把握し、なおかつデータとしていないと全く分かりませんから
ここだけ読んではい把握、ってワケには行きませんので宜しくです。
・全開加速時の変速回転数 「8500rpm」
・ファイナルギヤ減速比 「9.806」
・リヤタイヤ外周 実走補正込みにて1284.88o (≒0.00128km)
あ、最大変速比は112÷40=3なワケがありませんが、これは前にご説明した「実ベルトかかり径」を
数値として書いているだけなので、実際の変速比となる「かかり径」では無い事をご理解下さいな。
だいたい上の動画でもそんなもんなので、これを基準としますね。
いくつになっているのかを求める事が第一になります。
これが分からないと何も始まりませんので…
この○を求めるワケなので…
50÷0.00128=39062.5
39062.5×9.806=383046.87
8500x60=510000
510000÷383046.87=「1.3314297」
ベルトかかり径は62φ&82φ程度になりますね。
そして、この状態でのプーリーというかユニットスライド量は約6.5oになってます。
あ、これはあくまで私のGダッシュは、ですが…実際には自分で計算式をこしらえてエクセルさんに
働いて貰ってるのでこんな手計算はやってない事もご了承の程をば(笑
全開加速時の変速回転数は8500rpm、これは変わりませんが…ここで見るべき点は
かなり0に近い部類になっていますが、これでも実際にはシフトアップした分の回転落ちが存在します。
とはいえこれは簡単な事でタコを見ていれば済みますし、一度落ちた回転数はそんな大幅には
変動しないので簡単に見極める事が出来ますね。
7500rpmまで回転落ちが出ています。
…上手い事1000rpm程度のドロップですけどさすがに私ここまでは計算してませ(以下略
で、これであれば、速度ってのはアクセルOFFの「瞬間」だとよく落ちても1km/hや2km/hですから、
50km/hのまま同一と考えますが…その状態において
さっきと同じくこの○を求めるワケなので
50÷0.00128=39062.5
39062.5×9.806=383046.87
7500x60=450000
450000÷383046.87=「1.1747909」
そして、この時点ではドライブ&ドリブンのベルトかかり径は66φ&78φ程度になっています。
プーリースライド量としては約7.5o、アクセルOFF前よりも1oのスライド量増大、ベルトかかり径としては
4φ程度変化している、という結果になりますね。
(※何度も言ってますがこのベルトかかり径は「ベルトの最外周」の計測値ではありませんのでご注意をば)
「変化率」ってのは意外と少なくなって来ているので、さほど大きな変速比変化にはなっていませんが…
ギヤ比等によって変わりはしますが、原付一種ミッション車のミッション一段分に相当する位の
シフトアップが「アクセルOFFで」起こっている、とも言い換えられます。
(※↑実はコレ「トルクカム上級編」への大きなヒントだったり)
「見た目じゃほとんどシフトアップなんかしてないじゃん」と判断してしまうのは危険で、そのわずかな
「シフトアップ量=ベルトの動き」でも、
今回の実験でも、ミッション車だとアクセルOFFで4速が5速になってた、ってなればこれはさすがに無視して
かまわない部類では無いと思いますしね(笑
あ、これはキックダウンがあるから関係ねえ、と思われるかもしれませんが、アクセルOFFの時間が長いと
「ハイギヤード状態であればある程エンジン回転数の降下具合も大きい」と言う点もお忘れなく。
あまりに「アクセルOFF時の回転落ち」が大きすぎる構成と言うのもよろしくない、というのはお分かり頂けるかと。
私的な数値ではこの程度であれば十分にシフトアップ量は少ない構成なのですが、仮にこれがアクセルOFFで
2000rpmとかドロップする駆動系構成だと、ピーキーなエンジンの場合下手したら再加速出来なくなりますからね。
とはいえ、この現象にはトルクカム溝角度も大きなカギを握っていますが…これはまた後ほど。
おいても、上記と同じ様に「再加速した瞬間の速度に見合った変速比」にまでキックダウンが行われます。
もちろん、変速回転数は全開時の規定変速回転数にまで戻るのが基本ですが、構成によっては再加速の
場合は、100〜200rpm程度高くなる事もありますね。
が、これはさすがにもう誤差の範囲ですが、坂道とかで再加速しても8500rpmだった変速回転数が10000rpmに
なったりする事はありえないですし(笑
様な所でもどの程度の駆動系構成をこしらえるか、等にまで役立ちます。
これらも単純な話、駆動系ってのはベルトやプーリーを見る限り、速度に対しての変速量というか
そんなトコは一見適当なモノにも見えますが、実際にはかなりきちっとしいて、「ありえない数字」とか
無茶苦茶な速度にはまずならないんですよね。
載っている変速比、「2.850〜0.860」とかいった数値ってどうやって決定しているんだ?って事にもなりますし、
8000rpmで点火カットのリミッターで実際に60km/h程度出た所での点火カットを「設定する」のにしても、
「適当」じゃ絶対に不可能ですし。
変速(減速)比の関係という物がいかに大切かと言う事になります。
それを理解していれば、私のめんどくさい分析や計算にて「得られる物」もお分かり頂けるかと思いますよ。
溝角度の違いによる「トルクカムが効く力」の抜け具合
では、ここではもう少し突っ込んだ解説を行ってみましょう。
お分かり頂けたかと思います。
が、動画3の最後にもありますが、状況によりアクセルOFF時には明らかにシフトアップ量が大きいといった
現象もありえるんですよ。
これの原因、というか要因になるのが、表題通りトルクカムの溝角度だったりします。
トルクカムの効きである「ベルトを張る力」が異なってくるのはトルクカム中級編でもご説明した通りですが、
実はその「トルクカムの効き」も、アクセルOFFシフトアップについて非常に大きく影響しているんですよ。
(※絵が使い回しなのでベルトの位置は無視して下さい)
「トルクカムの効き」の力には差があるので、実際のアクセルOFF時のシフトアップ、WRがどかーんと
飛び出そうとする力とあいまって、「それまで効き続けていた」トルクカムが「すっぽ抜ける」力も大きく
影響して来るんですね。
(※どちらの溝でも変速比が同じと言う事は、「ベルトを引く力」も同じになっている事も捕捉しておきます)
反発力は大きいですよね。ベルトの事を言っているのではありませんが「力が抜ける」というのはそういった
意味合いだと解釈して下さいな。
その反面、アクセルを少ししか開けてないので、トルクカムを効かせる為の「クランク軸トルク」も弱いです。
下手をしたらパワーバンドを外れていると思いますが、そんな状態でも45°溝から「すっぽ抜ける」勢いと
いうのは結構大きい、という事がお分かり頂けるかと。
15%程度の差しかありませんが、これが変速比が大きい「2.5」とかの場合だともっと顕著に「力」の差が出ます。
これはトルクカムのピン位置等から、実際にベルトを張る、つまりお皿がベルトを挟む力を算出すれば
判明するのですが、この辺はさすがに公開を控えさせて頂きますね(汗
自分ではそういったトルクカムを効かせる力というモノも把握した上でこういう分析をしていますんで
そのあたりは私を信用して頂きたく思います。
切り替わる時にシフトアップが起こっている事は周知の事実ですが、それは置いておいても、90°溝と
いうモノは、いくらベルトを引いてもトルクカムが効かないので、実は90°溝に入っている時に
アクセルをOFFにしてもシフトアップはほとんど起こっていないんですよ。
これはノーマルトルクカムを組んでそれなりの速度でアクセルをOFFにし、タコを睨んでいると良く分かります。
大きければ大きい程、すっぽ抜けシフトアップ(?)も大きくなるので余計に顕著に落ち込みが出ます。
ノーマル駆動系構成のまま、ピストンをぶっ叩く力=トルクを上げるとモロに出ますが、こういった点では
加速側にこそデメリットがあれど、再加速側では「シフトアップしないがキックダウンも起きない」のですが
ムリクソエンジンのトルクで再加速を持って行ける場合もあったりするんですね(笑
実は、クレアカムの様な物は加速側も大事ですが、減速、再加速においても考える事はあるという事も
大いにあったりしますが、これはかなり難しいので簡単には行きませんね…
45°一直線トルクカムの売り文句に対して
45°一直線やそれに近いトルクカム溝に対してのツッコミを、今回のコンテンツ内容に照らし合わせて
行ってみたいと思います。
溝にデメリットが大きいのか、はすでにお分かりかと思いますが。
そうです、加速特性はプーリー等の特性もふまえ何とか誤魔化すとしても、後半が45°溝だと
ここにこそ最大の要因があると言っても良いです。
加速だけしか考えないのであればともかく、減速、再加速というのはSS1/32mileでも無い限りは絶対に
必要ですよね?
トータルで考えるとこれにノーマルトルクカム以上のメリットなんてあるのか?って事です。
そこからの強制シフトダウンである「キックダウンを起こす力」は60°溝より確かに大きいですが…
そもそも、それ以前に「60°溝の方がアクセルOFF時のシフトアップ量が少ない」ので、そちらの
方が遥かにメリットが大きいんですよ。
同様に大きくなりますからね。
仮に全開加速時に50km/hでアクセルOFFすると…
60° 8500rpm→7500rpm
時間が長ければ長い程、エンジン回転数がパワーバンドを外してしまう可能性がどんどん大きくなるんですよ。
なお、私が「可能な限りパワーバンド上限辺りに変速回転数を持って行く事」を奨めるのもこれを防ぐ為の
一つの重要な要因です。
多少のシフトアップが起こったりアクセルOFFの時間が長く回転下降が起こっても、それに対してパワーバンドの
下限から外れにくい事にもなりますからね。
外れている事になってしまっては、全くもって意味がありません。
「アクセルOFF時のシフトアップが大きい」というのはつまりはそう言う事なんですね。
ノーマルマフラーやパワーバンドの余程広いチューンで無い限りは再加速はもたつき気味になります。
特に、チャンバー車だとアクセルOFF時にエンジン回転数が「パワーバンド直前の谷」に入ってしまった場合
全くもって立ち上がれなくなってしまうんです。(ピーキーなエンジンでサーキットの極低速コーナー等)
なお人間がアクセルをOFFにしている時間が多くても同意で、仮にアクセルOFF時には7000rpmにて
パワーバンドの下限ギリギリだったのがすぐに6000rpm程度まで落ちてしまっては、余計に鋭い再加速は
難しくなってしまう事は想像出来るかと思います。
強くした上で再加速している事なので、毎度毎度それを行っていればこれも「タレ」の原因の一環に
なっていますよ。
「元々シフトアップが起こりづらい様にする」のが何より先決であり、
合理的な手法になるんですよ。
当然、いつも言っている私個人の基本理念とも合致してたりします。
「起こってしまう事に対して対処療法を施すのではなく、ハナからそれが起こらない様にする」と
言う事ですね。
一般的な巡航速度域だと、変速比自体は1.8とか1.5とかであまり低下していない状態で「アクセルOFF」に
する事が多いはずです。
度合い、というのはかなり大きくなっているというのは簡単に想像出来ますね。
また一例を出しますがV100なんかその最たる例で、ハイギヤすぎるファイナルギヤとスズキ特有の
45°(実際は47°位ですが)一直線トルクカム、そしてノーマルでは物理的にかなり重く設定された
WRもあいまって、アクセルOFF時の回転変動はかなり大きく、再加速においてはエンジン自体の
パワーバンドがある程度「下」に広い事に大きく助けられている面がモロに見えてしまっていますんで。
私の知る限りではですが、かなりまずい構成であると分析しています>V100駆動系
多数おられると思いますが。
別に、それで走れるのであればそれでも良いと思うんですよ。少なくとも発進時のトルクカムの効きの
弱ささえカバー出来ればあまり致命的な問題は無く、汎用性のある物になりますからね。
発進〜変速中盤までのトルクカムの効きが不足する傾向にもなりがちなんですが、これは使い方次第です。
パワーがあって大抵が前半溝を常用するニ種ハイチューン車とかならかなり有用だと思えたりもしますね。
そうなった場合は45→60°溝の場合よりも、高速域でセンタースプリングが強い分、伸び感が失われる
可能性もあります。
加えて、発進時にはアクセルを大きく開けないと満足行く発進にならないという、扱いづらさもそれなりに
出てしまう等のデメリットもありますしあと一つ、ココには書いてないデメリットもあったり。
今回もう一つ付け加えるならば、「曲線溝でもない」としておきましょうかね(謎
ではここで、私が街乗りGダッシュにて撮影した動画がありますのでこちらをご覧下さい。
とはいえ、これは発進直後なので完全にトルクカムが効いておらず、また規定の全開変速回転数にまでも
で、これってちょっとしかベルトは動いてないじゃん、と思われるかもしれませんが、実際に駆動系の
なお、この動画で他にも突っ込んでおくべき点がありますが、アイドリング状態ではベルトはぐわんぐわんと
これこそが、
実際にトルクカムが効く事の出来る「走行負荷」が無い状態では
ベルトの張りがどうこう、と言うモノは語れない
と言う事のひとつの証明でもあります。
この正常動作する駆動系構成だと、走行負荷が無い場合はエンジンかかっていてもベルトだるだるですし、
コチラは低速走行を数回繰り返し、停止した後に全開加速に移っています。
で、だいたい動画の25秒あたりでしょうか?ある程度加速し速度が出ている「加速中」に、アクセルをOFFに
そして、アクセルOFFのシフトアップ後にはアクセルを開け直しているので、ここで初めて「キックダウン」が
コチラは全開加速中にアクセルOFFといった動作を3回行い、4回目には「少しだけ」アクセルを開け直して戻してます。
動画内では、4回目のアクセルOFF/ONを行っている時は、それまでより多少速度を下げた上での
後…「3」の最高速状態からのアクセルOFFなんですが、これは私の機材では撮影不可能でした_| ̄|○
さてさて、次に上記動画でも判明している様な、アクセルOFF時のシフトアップ現象という物が
ではまずは、いつもながらですが下記の絵をご覧下さい。
この様に、加速側変速では
・ドライブ側でベルトを張る力=WRの遠心力 (重量&回転半径&回転数)
と、おおまかにはこの3つの力関係が存在します。
で、絵の通り、ベルトを張る為にWRには多大な遠心力が掛かっていますが、これが大前提で
さて、ここでアクセルをOFFにすると…
お分かりでしょうか?
となれば、ベルトを「引く力」もエンジン回転数が0では無いのでそれなりにはあるワケですが、
こうなればもうプーリーはシフトアップ方向へ移動するしかなくなり、結果的に最低限度センタースプリングの
簡単に言いますと、WRが外に飛び出そうとする力を抑えていたトルクカムの効きがほぼ0になるので
後、ちょっと捕捉ですが最高速時にアクセルOFFを行った場合は、基本的に最大変速状態なので
これが、目視でプーリーのベルト摺動面にマジックで線を引いてもある程度の目安にしかならない理由で、
これは加速時でも同義で、加速中にアクセルをOFFにしてブレーキかけて停止しても、実際にプーリーを
では次に、この「アクセルOFFシフトアップ」ってのは、一体どの位行われているモノなのか、といった
ではまず、私の実験車両である街乗りGダッシュのデータをば。
・ドライブ&ドリブン側ベルトかかり径 40φ&112φ 最大変速(減速)比 「3.000」
こうなっています。
で、一例として、おおむねですが約50km/h程度にて、アクセルOFFを行ったとします。
ではまず、「8500rpmで50km/h出ている」という状態、この状態であれば変速比は
ざっと算数LVの計算式に当てはめますと…
(8500x60)÷○÷9.806×0.00128=50
って事で、50km/h出ている時の駆動系減速(変速)比は1.331になっています。
これで「50km/h出ている時の変速比」が出たので、次は実際の走行にて必要なデータがあります。
アクセルをOFFにした瞬間のエンジン回転数
を把握しなければならないんです。
構造的にはアクセルOFF時にはシフトアップしているので、実際にはベルトの駆動力は100%といわず
私のGダッシュだと、50km/hまで加速した瞬間にアクセルをOFFにした場合、
「7500rpm」のエンジン回転数で
「50km/hの速度」が出ている「変速比」
(7500x60)÷○÷9.806×0.00128=50
となります。
なので、実際には変速(減速)比にて1.331→1.174までシフトアップしている、と言う事になります。
変速比的に見れば…ここまで変速が進んでいる場合だと、プーリースライド量1oに対する変速比の
これも、動画を撮影したり走行中に目視で駆動系のアクセルOFFシフトアップを「確認」したとしても、
「実際に」どれ程の変速比変化が起こっているのか
を分析しないと、分かったつもりになっているだけで実は勘違いしている、といった事もありえますからね。
…とはいえ、この「シフトアップ量」が多いのか少ないのかと言われればまた色んな話が絡んできますが、
なお、多少捕捉しておきますが、このアクセルOFFシフトアップ量と同義で、再加速時のキックダウンに
これらを逆手に取り、「アクセルOFF&ON時」の速度や回転数をデータとして取っていけば、サーキットの
これまたサービスマニュアルの話にもなりますが、圧縮比ではありませんけれどもメーカーの緒元表に
なのでギリギリまで詰めようとすればプーリーのスライド量やトルクカム溝の決定、はたまた実際の速度と
さてさて。これにてざっと「アクセルOFF時のシフトアップ」という現象については理解されたかと思います。
まず、アクセルOFFよるシフトアップは、アクセルOFF時にWRの遠心力が残る為に起こっていると言う事が
これはですね、加速側だと溝角度が違っていれば、ベルトかかり径や変速比、ベルトを引くトルクが同一でも
…これは細かい事を言い出すとかなり難しくなるので、簡単に絵を書きますがこんな感じです↓
さっきの6.5oストロークで変速比1.3程度という限定的な場合ですが、こういう状態でも溝角度による
ちょっと例えが変ですが、輪ゴムを両手で引っ張ってみて、強く引っ張れば引っ張る程に片手を離した時の
で、動画3の最後のアクセルOFF/ONだと、速度が少し下がっており変速比自体は大きくなっていますが
あくまで計算上では45°溝と60°溝には、「変速比1.3程度」の場合であればトルクカムを効かせる力には
なおおまけの補足で、ホンダのノーマルによくある45→90°溝ですが、これだと45°溝から90°溝に
で、加速時にその90°溝に入る瞬間も、それまでにベルトを引いている力、すなわちエンジンのトルクが
で、次はですね、まーたこれかよと思われる方が多数だとは思いますが(笑
とまあ、ココまで読んで頂けた方であれば、何故に45°一直線、いや今回は「最後まで45°一直線」の
どんな状況でも、その状況に応じた
「100%」のトルクカムの効きを発揮してしまい
アクセルOFF時には
常にもれなく「最大限のシフトアップ量」がおまけに付いてくる
これはですね、私が「常識的な駆動系構成の車両」に対し、45°一直線トルクカムをお奨めしないのは
便宜上、後半溝「も」45°だという表現にしますが、後半45°溝にピンがいる時にアクセルを開け直せば
同一速度、同一変速回転数にてのシフトアップ量が多い場合は、「エンジン回転数の落ち」も
45° 8500rpm→7000rpm
仮定ですがおおむねこんな感じになるので、もしもパワーバンドが狭かったり、その後のアクセルOFFの
なので、いくら「キックダウンさせる力」が優れていても、再加速の時点でエンジン回転数が大きくパワーバンドを
「キックダウンさせる力が強い溝角度」でも、すでにエンジン回転数がパワーバンドを外れていれば、
で、強力なキックダウンを生み出すというのは…それだけトルクカムでベルトを張る(挟む力)を
これも、「大きくシフトアップしてしまった駆動系を強力にキックダウンさせる」のではなく、
で、タイトル通り「売り文句」に対しては…
アクセルを開け直した時の
「キックダウン」は強いかもしれないが
アクセルをOFFにした時の
「シフトアップ」はかなり大きいのでは
もちろん、これもパワーがあってファイナルがハイギヤなニ種チューン車とかだと、下手をすれば
となれば、トルクカム自体の効きも変速比が大きい為に余計に強いですし、そこからすっぽ抜ける
で、ここまで読まれたなら「ん?それなら60°一直線溝でいいんじゃねえの?」って思われる方も
が、前半溝が60°の場合、あまりパワーの無いエンジンや極端に重い車体等だと、あからさまに
が、アンダーパワーであればセンタースプリングを強化しないと発進〜中速域が微妙な事にもなりえますし、
…とまあ、私はこの辺の理由も含め、理想的なトルクカム溝は一直線でも2段でもない、と言っているのですが