さてさて今回は…また基本になりますが、オートチョークについての一考をご紹介したいと思います。
このオートチョーク、レースのレギュレーション(FN&FPクラス)では「オートチョークをOFFに固定する為の改造のみ可」となっています。
しかしコレ、始動性が悪くても良いレースならともかくとしましても、突き詰める方なら私はストリートでもOFFに固定すべきかと思っていますよ。
いきなりですが何故オートチョークをOFFに固定しないといけないかと言いますと…コレ、私いつも言ってますけど
壊れるんですよ。アッサリと。
…なのでこんな不安定なモノは最初から無い方がジェッティングに悪影響が無い、と言う事ですね。
これに対しては私、「悪・即・斬」のスタンスで接していますので(笑
※本当は「チョーク」ではなく「バイスタータ」ってシステムなんですけど、一般呼称に合わせてます(汗
このオートチョークというヤツは…私の10ウン年のスクーター人生の中でも、壊れていない物を目にした事は数えるほどしかありません。
メーカー出荷時にはもちろんきちんと動いているハズですが、何かしらの原因ですぐに不調、もしくは故障してしまう物みたいです。
もちろんストリートマシンだと、雨やバッテリー劣化の影響を受け、サーキット専用マシンよりは壊れやすい傾向にあると思いますが…
そのオートチョークの仕組みですが、まず簡単にご説明しますね。
まずこちらの写真をどうぞ↓
ライブのキャブですが、チョークがOFF状態だとこの穴にオートチョークニードルが差し込まれます。
そしてキャブ吸入口にある、チョークエア?吸入口より通じている通路が物理的に遮断され、フロート室より吸い上げられている「始動用ガス」がカットされる訳ですね。
底の方に見えている穴がガスを吸い上げる穴で、側面に見えている穴がエア通路になります。
この反対側にもキャブのベンチュリー通路へ通じる穴があり、最終的にそこへ「すごく濃い混合気」として吸われています。
これはオートチョークに限らず一般的なチョークの仕組みになりますが、この穴を自動的に塞いでくれるのがオートチョークと言うワケです。
そしてその「オートチョークニ−ドル」の動きですが、これは電気的なシステムになっており、キーがOFFの状態だとチョークは常にONになっていますね。
キーをONにしエンジンを始動させると、しばらくするとオートチョークニードルが下がってきてチョーク穴を塞ぐ、といった流れです。
この「発熱膨張体」がクセモノで、電気が流れても全く作動しない事が非常に多いですね(泣
なのでそこが動かないと、いつまでたってもチョークが解除されないという悲劇が起こります…
エンジンがOFFの時には常にチョークはONになっていますので。
おおよそこういった仕組みですが…中古車や古い車体だと、基本的にオートチョークという物は
ほぼ100%の確立で
「ON状態で」壊れている
と思った方が良いかと。
コレ、未だに何が原因か分からないのですが、新車から雨天未走行&バッテリー上がり無しの車体でも、購入3ヶ月で壊れていた事がありますので…
原因はあるのだと思いますが、ただでさえ不安定な機構&壊れるとタチが悪い物なので、私はオートチョークは全く信用していませんね。
で、いつものごとくメーカーさんへケンカ売ってる理論になりますが(汗
このオートチョーク、スクーターならではの機構ですよね。
なので「わざわざチョークを手動で引かなくてもエンジンが始動出来る」といったメリットの為に装着されています。
用は「便利装置」の一つですよね。
例の発熱膨張体?が弱いのは何故か分かりませんが、もしオートチョークが壊れても「ON状態で壊れる」仕組みになっている所がポイントです。
…もしもコレが、「チョークOFF状態で壊れる」仕組みだとすると・・・一般の方にはエンジンの始動すら困難になってしまいますから。
混合気の比率的には、エンジンが冷えている時には「濃い目」の物をエンジン内に送り込んでやった方が、火花の着火性能が上がり始動しやすいですね。
後、いくら2ストエンジンといえどある程度エンジンが適正温度になるまでの「暖気」を行わないといけませんから、温度の上がらないエンジンに対して混合気が薄いとすぐに着火が行われなくなります。
ですので私は、あえてこういったトラブル(すぐ壊れる・壊れた後)を見越して開発しているシステムなのでは?と思っていたりするんですよね。
…深読みしすぎという説もありますけど(笑
話がそれましたが…結局オートチョークという物は、ON状態で壊れていると、
全体的に混合気が濃くなりすぎてしまう
といった最大のデメリットがあるんですよ。
…一般的な手動チョーク式のバイクを、エンジンが温まった状態でチョークを「引きっぱなし」で走行してみると良く分かると思います。
いくら通常の状態でキャブセッティングが100%出ていたとしても、ボコボコ言って回転が上げられませんよね。
スクーターのオートチョークが壊れた状態だとそこまではひどくならない様なセッティング(笑)の様ですが、濃すぎる事に変わりはありません。
しかもこの症状、意外と気付いていない方が多かったりします(汗
分かりやすい確認方法としまして…配線は繋ぎっぱなしでオートチョークを車体から外し、代わりのオートチョークユニットを配線を繋がず取り付け(フタでも良いです)、エンジンをかけてやれば良いですね。
オートチョークが生きていると、徐々にニードル部分が伸びてくるハズですから。
普通にオートチョーク配線に12Vを接続して10分位待っても良いですが…出来れば車載状態でチェックした方が確実ですしね。
(上の図では「キーONで発熱体が膨張」と便宜上書いていますが、実際はエンジン始動と共に動き始める仕様がほとんどです。「通常はキーON=エンジン始動」ですから)
ここを「大丈夫だ」と過信していると…スロー系のセッティングが全く上手く行かなくなりますよ(汗
この場合も…判断方法を一つご紹介しておきましょう。
基本的にオートチョークはスロー(パイロット)系への影響が大きいので、スローをセットするのと同じ方法で確認が出来ます。
走行中、エンジン回転を最高回転まで上げ、一気にアクセルをOFFにし、回転が落ちないうちにそこから8分の1程度アクセルを開けてみれば良いです。
まともにスロー系のセッティングが出ていると、「高回転時のアクセル小開度」でも、回転はバラつかずスムーズに「パイーン」とエンジンは回るはずですね。
(もちろんスローもチョークも両方ダメではどうにもなりませんが…)
無負荷のアイドリング状態からでも、エンジンが温まった状態でほんの少しアクセルを開けると「バラバラバラ」と言うのはダメですよ。
これでは確実にスローが濃いかチョークが壊れている症状なので…
スクーターの場合かなりこの辺りは分かりにくいのですが、もっと分かりやすい方法としまして、低速走行で確認するという方法もありますね。
本当に止まるか止まらないか、時速10km/h以下の速度、アクセル開度にして8分の1以下位で走行してみると良いです。
…一般的には「バラバラバラ〜」と言う音を立てながら進みますよね。
しかしこれではスロー系のセッティングが出ているとは言えません。
いくら「走行中の負荷」があっても、一度走り出して慣性が付いてしまえばいくらアクセルが小開度でもエンジンはきちんと回る物ですので…
アイドリングからパワーバンドまでは「バラバラバラ…」パワーバンド内だけは「パイーン!」というのではセッティングが出ているとは言えませんよ?
もちろん、アクセル開度は4分の1以下で、徐々に最高回転近くまで回したのが大前提ですが。
スロー系のみをほぼ100%使ってエンジンを回せば良く分かる、と言う事ですね。
(オートチョークがONのまま壊れていると・・・どうスロー系をいじってもこの症状は改善されないです。その位オートチョークONという物は「濃い」と思って下さいね)
ではやっと本題です(汗
ここからは物理的な「オートチョークOFF固定」の方法をご解説します。
まずオートチョークの構造ですが、これはメーカーごとに極端な違いがある訳ではありません。
予備の物を用意してバラしてみればすぐに分かると思われます。
ちなみにホンダは「左に回して分離させる」仕組みで、ヤマハは「下にコジって分離させる」仕組みとなっていますね。
この「分離」と言うのは、外部カバーと内部部品の「分離」と言うコトですのでご理解下さい(汗
単純にチョークニードルを「キャブ側の穴を塞げる位、下に飛び出させて固定」すれば良いだけのコトなんです(笑
この図では元々入っているスプリングを切り離し、チョークニードルを上側から押せる様にしています。
別にこの方法に限らず、チョークニードルがキャブ側の穴をキッチリ塞げば問題ありません。
埋めてしまっても良いですよ(汗
ここで加工前&加工後の比較をば。
ヤマハ系のオートチョークですが、明らかにニードルの飛び出し具合に差がありますよね。
これはちとやりすぎですが、チョーク本体をキャブに装着すればスプリングの力でニードルが押し込まれるので、キャブ側の穴が塞がったのが分かりやすい方法です。
「どの位ニードルを飛び出させればキャブ側通路が塞がるか」を見極めるのも大事ですね。
ちなみに右側の物はON状態固定で壊れている物です(笑
こういった方法でチョークニードルをOFF状態に固定すると、キャブ吸入口側やベンチュリー通路側の穴、そしてフロートからのガス供給パイプは全く無意味になりますので、埋めてしまってもOKです。
変な穴があるだけで何か不安ですし、ね(笑
後、オートチョークの配線カットだと…同じ効果にはならないと言う事を付け加えておきます。
仮にエンジン停止直後、オートチョークがOFFの状態で配線をカットし、発熱膨張体(合ってるのかな(汗)の動きを殺したとしましても、その容積の増えた膨張体は、温度が下がってしまうとまた収縮してしまうんです。
なのでオートチョークへの電源供給がカットされるだけで全く効果は無いんですよ…
最後になりましたが…オートチョークをカットした場合、もちろんエンジンの始動は少し困難になります。
そういった場合は、エアクリのエア吸入穴を指で塞ぐ等の方法で、濃い目の混合気を送り込んでやる必要がありますね。
…スクーターがキック&セル1発でエンジンが掛かるとかなり調子が良いと思われがちですが、例えば朝一の始動時等に、「(手動)チョークも引かずエンジンがかかる」のはおかしいんですよ(笑
手動チョークのバイクでも、エンジンがキンキンに冷えているのにチョークを引かずともすぐに始動してしまうのでは、極端にスロー系が濃いという証明にしかなりませんので。
もちろんオートチョークが生きていればそれで正常ですが、オートチョークをOFFに固定した場合は当然当てはまりませんので勘違いしないで下さいね。
あいかわらず長くなってしまいましたが…たまには基本に立ち返って、分かりづらい物を解説するのも良いかと思いましたので(笑
このオートチョーク、結構「知っていないと気が付かない」部類に入る物だと思いますので、一度チェックされる事をおすすめしますよ。
面倒くさくても手動式の方が安定したメリットがある、という事ですよね。
…アダプター等でノーマルキャブに手動チョークを取り付けるKITが発売されても良さそうな物ですけどね(笑