では、シリンダー内でピストンがロスが少なくスムーズに動くような組み方を解説します。
最近のスクーターは横置きエンジンが多いので、めんどくさくてもまずエンジンを車体から下ろすべきですね。
しかし、エンジンが横置きである以上、いくらピストン&シリンダーのクリアランスを確保しても、結局は全体的に腰上が「下側にズレて」組まれてしまいます。
具体的には下図の様な感じです。
しかし、いくらピストン&シリンダーのクリアランスが確保出来ても、エンジン搭載状態ですとどうしても図の様にシリンダーが「下がって」組まれてしまいます。
そして、ピストンが上死点&下死点にある時には、図中の赤線の「コンロッド」が、斜めになってしまっているのです。
「シリンダーとクランクケースのズレ」を無くすためにも、エンジンを下ろし縦にして作業するか、もしくは車体をウイリーさせた状態で作業する事をおすすめします。
(車体をウイリーさせるのは人手が必要になってしまいますが)
この様な物です。
この四角い物が「オイルストーン」です。
水の代わりに2stオイルを使う「砥石」です。
を平坦化させてやります。
・・・実際はこの様な持ち方ではダメですよ。
きちんと押さえつけて磨きます。
シリンダー&ピストンに塗布するオイルはごく少量で良い
という事です。
理由としましては、シリンダー&ピストンに大量にオイルを塗布したところで、1回目のエンジン始動時にはまず完全燃焼しないのです。
ですので、エンジン組み立て後にすぐに全開走行をしないと、大量に塗布したオイルがカーボンとなってピストンや排気ポートに、生のままのオイルはクランクケース内に溜まってしまうのです。
補足としまして、別の項目でも説明しましたが、オイルが少々足りなくてもエンジンは動く物です。
それ以上に、「アイドリングは2ストの敵」と言われる程ですので、カーボンの溜まり具合、エンジンの汚れ具合を重視した方が良いと私は思いますので。
手で締める場合は、何回かに分けて締めるべきですね。
もちろん、1段階締めるたびにピストンを動かしてやる事も忘れてはいけません。
私は、基本的にエンジンを下ろして作業しますので、キックを踏むのではなくフライホイールを回転させてピストンのセンターを出しています。
私は、ここにはホンダ系エンジンのマフラー取り付け部分のスタッドボルトを入れて、ナットでとめる様にしています。
この様な感じです↓
この様にスタッドボルトを移植しています。
ちなみにボルトピッチは同じです。
マフラー取り付けの効率がかなり良くなりますね。
スタッドボルト 90031-GBL-000 ×2個
キャップナット 90308-GBL-000 ×2個
となっています。
いずれもホンダ純正部品です。
(使うチャンバー&マフラーの形状によってはナットが締めにくくなってしまう事もあります。)
なお、熱でスタッドボルトが焼きついて折れた場合でも、ヤマハの様にシリンダー側にボルトが残らないという最大のメリットがあります。
私のエンジンの組み方は少々手間が掛かりますが、基本的に
「出来るだけ不安要素を無くす」
ここでは、ピストン&シリンダー、いわゆる腰上の組み方についての考察をしたいと思います。
「ピストン&シリンダーの慣らしについて」の項目でも説明しました様に、エンジン腰上も基本的にはロスが少なくなるような組み方で組むべきですね。
まず、ピストンの上下運動を妨げないようにするには、ピストン&シリンダーを真っ直ぐに組む必要があります。
なお、エンジン搭載状態でも、腰上を組み、何回もキックしながらヘッドボルトを締めれば、ピストンとシリンダーのクリアランスは確保出来ます。
キックを何度も踏みクランキングをする事により、図中A点とB点のクリアランスはほぼ同じになります。
・・・これでは、いくらキックを踏んでクランキングし、ピストン&シリンダーのクリアランスのバランスを取った所であまり意味がありません。
さて、エンジンを下ろし、ピストンを組み、シリンダーを載せる訳ですが、この一連の作業に移る前に、シリンダーが真っ直ぐ組める様にオイルストーンを使って、シリンダーヘッド&シリンダー&クランクケースの合わせ面を磨いておきましょう。
このオイルストーンを使い、
ガスケットを取り去る時に付いてしまったキズも取ってくれる便利な物ですね。
各接合面を磨いたら、2stオイルを塗布してシリンダー&ヘッドを載せます。
ここでのポイントは、
髪の毛1本分位の厚さ位の感覚で塗布すれば良いでしょう。
・・・これでは、せっかく新しいピストン等を組んでももったいないですね。
そしてシリンダーヘッドを締める時は、出来るだけトルクレンチを使いましょう。
最後に、ヤマハ系のエンジンは、マフラーを取り付ける部分がボルト式になっており、少々作業性が悪いですね。
ちなみに品番ですが、
さて、これでエンジン腰上の組み方の解説は終わりです。
という考え方が前提ですので、小さなミスで大事なエンジンを壊してしまう確率が減ると思います。
しょっちゅうエンジンを開けることはまず少ないと思いますので、エンジンを開けた時にでも「ピストン&シリンダーの慣らしについて」の項目とあわせて、この様な方法を実行されてはいかがでしょうか。
きっとトラブルが起きにくく、耐久性のあるエンジンになると思いますよ。