改造車の「使い方」の基本



さて。これまで色々なチューニングの基本事項をご説明して来ましたが、まとめとしましてそのチューニング車両の使い方について少々触れたいと思います。

エンジンや足廻り、色々な所をチューニングし、トータルで性能の良いマシンを作成出来れば、ラィディングの幅も広がりますね。

もちろん、自分で作ったマシンを扱えないのであれば、自分の腕に合ったトコロまでデチューンするのもやむを得ないと私は思っていたりしますが…


ここからは以前掲示板にてお答えした文章の引用&改編となりますが、とても大切な事なので是非じっくりお読みくださいませ。

…文字ばかりですが(汗



さてさて。まず「フルノーマル車」についてですが、これは基本的に「安全マージン」が無茶苦茶に大きいモノとなっています。

すなわち、メーカーさんで基本的に30km/h+αの速度域の「常用」を想定して設計されていると言う事です。

ですので…「本当は」60km/hの速度で巡航するのは想定外なんですよ。


しかし、実際は安全マージンが非常に大きく、なおかつ60km/hの巡航でもそこそこ耐えられる仕様として設計されている事は間違い無いので…

フルノーマルだとオイルが悪かろうが整備が悪かろうがなかなか壊れるものでは無いんです。

(その安全マージンをギリギリまで取り去ったのがFNレーシングマシンですが、はっきり言って「フル」ノーマルとは性能的には比較になりませんね)


しかし…何か一つ、CDIで少し最高速度を伸ばしただけでも、私はその速度で「全開巡航」するのは自殺行為だと思っています。

「メーカー想定外」の使い方なのですから、それ以上の負荷をかけると壊れて当たり前、と言う事なんですね。

ただ…良く誤解があるのがこの辺なのですが、アクセル全開で、最高の性能を発揮した状態で何分間も走り続ける、と言う事は…私にしてみれば気が狂っているとしか思えませんよ?

チューニングの度合いにかかわらず、完全な限界性能を何分も引き出すとなると…エンジンに対してはこれ以上無い程の限界を超えた負荷がかかっているんです。



ノーマルならさすがにしばらく全開にしたところで壊れるものではありませんが、混合だろうが水冷だろうが限界の性能を引き出し続ければ、何らかのエンジントラブルが発生するのは間違い無いです。

逆に、全開&限界性能での数分間巡航で何のトラブルも無い、という場合だと、現在は100%の性能を出し切っていないと言う事の証明にしかなりえませんね。

もちろん、あえてそこまで「使い切らない安全なセット」、という解釈もアリですが…

ストリートマシンですとそこまで長時間無茶な走行を続ける事自体ありえないので、ハイチューンにおいては長時間の限界巡航=トラブル発生がイコールで正解かと思われますね。


実際、レーシングマシンでも限界の性能で走り続ける物ですが、コーナー進入&ブレーキング時にはアクセルをOFFに出来、短時間でもエンジンを休ませられる場合も多々あるんですね。

ストリートで、「長い直線を何kmも全開の限界性能で走行する」事とは、負荷のかかり方が全く違います。


レーシングマシン等の耐久レースだと、長い時間を走行しますが、上記の通りいつも「エンジンが限界」の状態ではありません。

なので最高に負荷がかかる所だけを見極めてセッティングをしておけば、そうそう耐久性に問題がある物ではなくなって来る物なんです。

(レーサーですとそれでも絶対にトラブルが無い、とは言い切れない位詰めてセットする物ではありますが)


なので一番怖いのが、ストリート仕様での「数分〜数十分の全開」なんですよ。

田舎道等の長い直線だと、アクセルを一切戻さないという状況もありえるかと思いますし…

そういった状況での使用だと、いくらセッティングやエンジン作りに時間をかけても、どこもトラブルを起こさないという方がおかしいですね。


少なくとも私は、「80km/hで巡航したいのなら、最低100km/hは出せるエンジン」が必要だと思っています。

80km/hが限界のエンジンで80km/hでずっと巡航するのは自殺行為以外の何者でもありませんので。

私は街乗りでも、限界性能を出し切って巡航することなどは絶対に無いです。

ココ一発の余力がなくなるのは何よりも怖いですしね。

実際、全開加速中の「何も出来ない」時が一番恐怖を感じますし、「これ以上スピードが出せない」という「アクセル全開での限界性能の最高速度」での長時間の巡航なんて怖くて出来ませんね。

これはエンジンうんぬんだけでは無く、ラィディングにおいての「緊急時に余力が無い」という…致命的な事と同意なんですね…



街乗りだと緊急回避はブレーキが基本ですが、そう上手く行かない場合もありますよね。

そのための余力も大事ですよ?

初心者には「何かあったら避けようとする→コケる→ケガ」というのは非常に多いですが…良くありません。

緊急回避はまずブレーキが基本なんです。それでもダメな場合は「転倒する」物なんですよ。


分かりやすい例えで…車に乗られる方だとお分かりかと思いますが…左車線の左側から何かが飛び出してきた、と仮定しましょう。

その場合、「右にハンドルを切って回避行動に移るのか」、もしくは「ブレーキを踏んで減速する行動に出るのか」といった違いです。

もちろん何か不測の事態があった時には減速を行うのが基本ですね?

車だと急ハンドルを切っても、よほどの事が無い限り転んだりはしませんが…こういう場合の「回避運動」だと対向車線や後続車には危険です。


とまあ、バイクですと緊急時に「かわす行動」をとってしまった場合、転倒率は格段に高くなってしまいます。

いつのまにか理論が逆転してしまいましたが、前述の「エンジン性能の余力」が必要な場合とは、状況によってはブレーキングよりも巡航状態からのアクセルONにて「緊急回避」を行うのに必要になります。

こんな状況はレースでも無い限りなかなかありえませんが、それでも「アクセルが全開、性能も限界でこれ以上何も出来ない」という状態をわざわざ作り出して運転するよりははるかに「余裕」が生まれますよ。

まったく性能的に余力の無い状態で走行していると、間違い無く何かあった時の「ブレーキの操作」にまで影響は出てくるはずですので。

マシンコントロールにおいて、アクセルは「戻せば良い」だけの話ですが、ブレーキはそういう簡単な物ではありませんので…「走る」事よりは「止まる」事の方が何十倍も大事だと言う事を念頭に置いて頂ければと思いますよ。

…なので私、最近のアンダーパワーで車重のかなり重い、しかもフロントドラムブレーキの4st系50ccスクーターは危険極まりないと思っていますが…

(ちなみにレーシングシーンにおいても、目の前のトラブルを回避するにはまずブレーキが一番で、減速しつつ回避行動を行う物ですからね)



かなり話が脱線しましたが…

とにかくトラブルを避けるには「長時間限界性能で巡航しない」と。

これが最良の方法だと私は思っていますよ。

実際、いらないトラブルを避けるにはこれほど有効な方法はありませんし。


しかしそれでもスピードが欲しいのがチューニングですので…捕捉としまして。

あくまで安全策としては、変速比でスピードを稼ぎ、「自分で満足する以上の性能」を手に入れ、その上で少し「遠慮して」走行するのが一番でしょう。

50cc程度の市販スクーターだと、「限界性能で走り続けられる」という事は可能ですが、それだけ「メーカーさんが設計した余力を使いきっている事」を覚えておいて頂きたいですね。




長くなりましたが…この辺は常用回転数がいくつ、と言う事やスピードが何km/h、という次元では無く、あくまで使う人間で危険度は変わってくる、と言う事ですね。

極端な話、パワーをいくらも扱いきれもしないのに ハイパワーなエンジンを作っても、面白くもなんとも無いかと思いますので。

(あ、俗に言う「じゃじゃ馬」的なマシンという物は確かに扱いにくいですが、乗る人が乗れば限界そのものはかなり高い物ですから)


こういった「使い方&乗り方」という物は本当に人それぞれかと思いますが、やはりどんなマシンでも、何も考えず無茶苦茶に乗っていたらそれだけトラブルの起こる確率は高くなります。

そして周りに与える危険度も加速度的に高くなってしまいますので…このあたりの事をきちんと考える事も、チューニングにおいては絶対的に必要な事かと私は考えていますよ。

特に年齢の若い方には、チューニングと合わせてきちんと考えて頂きたく思います。



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