2016年版 FN仕様ライブDio-ZXについてのまとめ その1



さてさて…今回これを記している現在はすでに時も2016年末でして…レースと言いますか

表題の「FNマシン」といった2st50ccノーマルスクーターを用いて戦うクラスもかなり縮小化が

進んでしまっている世の中になっております(泣

とはいっても私も2016年より久方ぶりにFNマシン運用に復帰したこともあり、もはや今の時代では

役に立てられる方はほとんどおられるとは思えませんが、最終形態とも言うべきライブDio-ZXの

「FN仕様」を解説してみたいと思いますよ。

今回は「その1」なので主に駆動系とエンジン周りの解説になっていきます。

ちなみに今回はその内容がゆえ写真や図をあまり使いませんのでよろしくです(汗


※当コンテンツより以前にある駆動系構成等に関しては、すでに10〜15年以上前の物になって

おりますので、今回の最新コンテンツとは趣が異なるといった点にはご留意下さい。


※そして最初に記しておきますが、結果的に「速ければ良い」「細かい事やっても無価値」といった

思考形態の方であればこんなコンテンツを読んでも時間と人生の無駄なのでスルーして下さい。

私はココに訪れる方々に困ったり迷ったり損をして欲しくないが為にこれを記している、と

いった点、何卒お忘れなき様にお願い致します。


※いつものコンテンツ内目次リンクです。2つですが(汗


・駆動系等


基本ノーマルですが(汗


ではまずFNマシンといえばこれ、といった感じでもある駆動系の構成をご紹介しますが…

以前はジョルノクレア用トルクカムとセンタースプリングの流用が定番とも言える感じになっていましたが、

現在ではサーキットでの周回レースを前提とした駆動系構成ではクレアカムは用いません

…何故なのかは後述しますが、とりあえずは現在の最良であると思われる仕様を羅列します。



と、ノーマルのままの部分もありますが、基本的にはノーマル構成のままでセンタースプリングを

交換しWRを調整、レギュレーション変更によるボス長調整を行いつつ最高速度を調整した上で

クレアセンタースプリングによる2速発進状態をクラッチシューで補う、といった感じですね。


…それだけかよ、と思われるかもしれませんが、ストリートの様な千差万別な状況にて走行する場合で

あれば、ココ一発の上り坂等でクレアカムが効果を発揮する場面は多いですが、サーキットが前提だと、

ストレートエンドでの最高速度、最大変速直前の領域の加速が鈍ってしまう事を嫌っての選択になります。

FNクラスマシンでかつライブDio-ZX、となれば最大の目的としてはマシンの扱いやすさではなく、

3YK型JOGとの速度差を少しでも詰める事なので、ただでさえ純正で

ハイスピードプーリーな3YKに対し、60km/h〜からの速度域での加速で置いていかれるのは極力

避けなければなりません…


これは当サイトの「スクーター改造」コンテンツを熟読されている方ならばお分かりかと思いますが、

トルクカム溝は角度が寝ていれば寝ている程、同一の力でベルトを「引いて」もベルトを挟む力に変換される

効率が良くなるのですが、ノーマルパワー程度であればセンタースプリングを弱体化させた上でのノーマル

トルクカムでもそこまで問題は生じませんので。

これ、センタースプリングがノーマルのままで後半溝が60°のクレアカムを投入し、その上でWRを調整し

変速回転数を合わせた上で走ってみた事のある方なら体感済みのはずですが、そういったセットの場合だと

変速終盤で変速回転数が上がり気味になる上、加速そのものも鈍ってくるんですね。


なので、クレアカム採用の場合はトルクカム作用力の強さを前提とし、その補正としてセンタースプリングを

ジョルノクレア用に変更するのが定番ですが、実はこれでも変速後半においての「ベルトを挟む力」という物は

まだオーバー気味になっている、という事です。

イメージ的にはやりづらいかもしれませんが、ノーマルトルクカムの後半溝90°、すなわちトルクカムの

作用力が一切無い状態で、かつセンタースプリングを弱体化させても実際の加速状態においてはそこまで

おかしな事にならないんですね。

確かに、多少の変速回転数の落ち込みは出るといえば出ますが、私の経験上ではそれはおおむね100〜200rpm

程度であり、実際の加速力が落ち込むレベルではない上、その程度ならすぐに復帰するレベルでした。


なお、皆さん気にされるであろう「再加速のレスポンス」に関しては、これはノーマルトルクカムでもサーキット

レベルのブレーキングとアクセルONであれば全く問題となりません。

これまた解説ははしょりますが…トルクカム後半溝に角度がある場合、アクセルをOFFにした瞬間には

どうあっても駆動系が「シフトアップ」してしまい、その分エンジン回転数も落ち込んでしまいます。

しかし、溝角度が90°で、トルクカム作用力が0である場合ならば、アクセルを戻してもトルクカムの作用力は

一切「抜けない」ので、駆動系はシフトアップ作用を起こさず、エンジン回転数も全く落ちないのです。


これはタコメーターを注視していれば分かりますし、当サイトの別コンテンツでも動画で紹介してますが、

アクセルOFFでシフトアップしない、という事はトルクカム後半溝を用いている速度域の場合、

それだけパワーバンドを外しにくく再加速のレスポンスに優れる、という事にもなっていますよ。

実際、近年の車両だとPCXとかもなんですが…トルクカムの後半溝に角度をつけていない傾向の車種は

高速域のアクセルON/OFFでのレスポンス、というかエンジンの回転変動を抑える目的で用いられている

場合が多いでしょう。

(※4st単気筒だとエンジン2回転に一度しかトルクカムを全力で引いていない等の差異もあり色々ありますが)


3YKのJOG系だと3AAと3FCの違いがあったりしますが、これも後半溝60°の3AAよりは70°位の3FCの方が

高速域でのレスポンスと加速のムラの無さ、かつ回転変動の小ささには優れていたりします。

ここでぶっちゃけますと大昔の定番であった3XGプーリー+3AAトルクカムってのは変速終盤でちと

回転上昇気味になるので私は最終的にはJOGでも3YJプーリー+3FCトルクカムが良いと判断しましたね。

(※残念ながら3FCトルクカムは2013年あたりで廃盤で3AAに統合ですが)

シグナスXとかでも同様の某流用品があるみたいですが…タンデム前提や上り坂ばかりならば役にも

立つでしょうが…体感で変速回転落ちが無いから速くて良い、とは限らないのが世の中ですよ、と(笑



ちなみに、こういった仕様で一番大切な事は…プーリーが劣化していない事です。

これはプーリー中央部のメタルボスの事を示しているのですが、ここは潤滑油含有の特殊金属なので、あまりにも

劣化が進んでいるとプーリーの「スライド動作」がおかしくなってしまい、かつ温間時と冷間時の動作の差も

激しくなり、俗に言う「熱ダレ」を誘発してしまいます。

要はプーリーがポンコツ劣化品だとトルクカムの特性なんて把握しようもないというだけです(笑

仮に5000kmとかを走ったノーマル中古車を乗ってみて、この車種はこういった特性なんだ、と分析するのは

何の役にも立っていない、とも言えます。

そして社外品45°一直線溝トルクカムなんかはプーリー劣化事例を知らない人に対してそのあたりを体感で

誤魔化せる為に人気であったとも(以下略


一般的なチューンにおいても、プーリーの劣化があれば同一のエンジンに新旧のプーリーだけを交換してみて

同一のWRを入れても、温間時には同一の変速回転数にはならない事がありますがこれこそがプーリー中央の

メタルボスの劣化であり、そうなるとプーリーは新品交換するしか手がありませんよね。

なので…もっとぶっちゃけて言えば、新車を買ってきていきなり50kmとか100kmの長い距離を走ってみて

信号待ちで止まり、再加速したら熱ダレみたいな事になりますか?と(笑

駆動系の変速特性がおかしい、妙にシビアになるといった事例ってのは実はプーリー中央部のメタルの

劣化によるところがかなり大きいんですよね。

ただし、これはライディングテクニックの問題も絡みまして…仮に街中でも交差点をじわっと曲がって

アクセルを開けるのは駆動系が自動的に最小変速状態に戻った後、といった走りであればプーリーの

劣化ってそこまで気にならないので…


と、ちょっと話が飛びましたが(汗

とにもかくにも、一番無駄の無い「高速域の加速」と「最高速度」を出したい場合であれば、ノーマル

トルクカムとクレアセンタースプリングの組み合わせがFNマシンとしては最良である、という事ですね。

なお、トルクカム自体の指定としては初期型ライブDio-ZXの物かGダッシュ等の採用品を指定していますが、

この2つはほぼ同等なのですが、ライブDio-ZX中期型以降に採用されている「23220-GBL-880」は推奨しません。

このモデルでは45→90°の溝角度が切り替わるポイントが異なっており、小難しい話は割愛しますがクレア

センタースプリングとの組み合わせだと、溝の切り替わり部分での回転落ちが大きい傾向が出ます。

(※刻印「HM-LK」の物です)

これはボスのセットにもよりけりなのですが、私は「23220-GBL-700」(HM-BL)を用いた上でドリブンユニットを

ピン位置違いの物2種類で使い分けて調整していますが…ボス側で融通が利かせられるのであまりにも酷い

場合でなければそこまで気にしていなくとも良いですし、疑うべきは先にトルクカム溝の劣化で良いでしょう(汗



次にベルトとボスですが…まずベルト、これに関してはライブDio-ZX純正品の「23100-GAG-751」が2006年頃に

廃盤となってしまい、ジャイロ用の「23100-GAG-J52」に統合されているので事実上これ一択です。

実際にはGAG-751が外周長671o程度なのに対し、GAG-J52は674oとかあり多少長い上、新品状態では

幅も0.3o程度太いので互換しづらいと思われるかもしれませんが、ボスワッシャーの調整を用いればなんら

難しいことでも何でも無いんですよ。


なお、パーツそのものの特性として、ベルトというモノはゴムですから多少の慣らしは要りますし、その上で

洗浄&乾燥を行ってやると…新品状態より明らかに縮んできます

ベルトというモノは新品からしばらく使うと外周長は縮んできて、その状態で安定するものであって

「伸びる」なんて事になればもう破断寸前なので実際の運用上ではまず遭遇する事はありません。

ド新品の寸法を取っても意味が無い、とどっかで書いた気もしますが…ある程度馴染んでから採寸してみると

GAG-J52なんて外周長2〜3o程度縮んでいるのが当たり前のレベルだったりしますのでご注意をば。

(GAG-751だとそこまで変わらなかったのですが…)


で、これに関連してボスですが、これは純正で全長33oの物を用いた上で、キタコ等のシムワッシャーでも

何でも良いので追加して調整し、おおむね「35mm」を基準としてセットしていきます。

ノーマルと比べて1o短い状態、という事ですね。


これに関しては、2006年頃にFNのレギュレーション変更があり、JOG系だと純正パーツですでにいくつもの

シムワッシャーがあって調整が容易なのに、Dio系は全く出来ない上に私の様な変人みたく、ボスの誤差を

捜し求めて新品を買いあさるというのはあまりにも酷い、という事もあって変更になりまして(笑


現状のレギュレーションでは


駆動系(クランクシャフト、クランクケースカバー、リヤホイールは除く)は同一メーカーの50cc

スクーターの部品であれば流用を認める。ただし、無加工、無改造で装着できるものに限る。

ウエイトローラー及びボスワッシャーについては社外品の流用を認める。


となっていますから、ボスそのものの加工等は駄目ですが短い純正ボスにシムワッシャーを

追加するのは問題が無い、といった解釈になっていますね。

ちなみにWRも社外品OKですが、これは私は特に必要とはしていないです(笑


そして、このボス調整にて長く太いベルトを用いて構成を形作る訳ですが…これに関しては色々と

難しい面もあるので簡単にはご説明出来ませんが、まずはボス長を「35o」とするその理由から。

以前はボスの変更が認められておらず、事実上36o近辺のボスを使うしかなかったので、事実上の

「ハイスピードプーリー化」を行うには4st50cc系の系純正プーリーを投入する事しか出来ませんでした。


仮に、TodayのGFCプーリーをそのままランプごと投入した場合だと、変速比としてはノーマルに対して

ボスを1o短くしたのとほぼ同じの数値となるんですよ。(※発進側もです)

なので、ボスの調整が行える場合であればわざわざ大きなプーリーを入れる必要が無くなり、かつノーマル

プーリーというノーマルトルクカムとは相性抜群の組み合わせを行える事により、4st用大径プーリーを

用いる必要が全くなくなった、という事になります。

…本音としては大昔、せっかく見つけたのに残念といった感じで(以下略


で、これに関しては4st用のプーリーが大径な分、最大変速比も小さくなってハイスピードプーリー具合が

違うんじゃないか?と思われる方もおられるかもしれませんが、実際にはノーマルとGFCの外径5φの差を

埋めるべきプーリースライド量の1.5o分程度って、どうあっても無加工では稼げません。

少なくとも、FNマシンで大径プーリーを用いた上でさらにボスを短くしても、そこまで変速させるパワーも

難しいしストレート距離も足らない、というのが現実でしょう。

(ただし長い直線を走れるストリートなら差はありますし加工出来るなら話は別です)


そもそも、そこまでやるならば汎用性に優れるノーマルプーリーを用いた上でボス調整を行った方が

安定したメリットがあり、過去にリコールも出ていたGFCプーリーは外国製という事もあって、安心した

レスポンスと耐久性を得るならノーマルプーリーが一番である、と私は分析していますよ。

あくまで今分析すれば、の話ですが私が最初期にやっていた、「ノーマルプーリー+Gダッシュベルト」と

いった組み合わせはまさにこれを狙ったのと同じ効果であった、とも言えます(笑

言うまでもありませんが現在ならボス長を調整出来る以上、わざわざ短いベルトを用いる必要も無いでしょう。


…ちなみに余談ですが、JOG系の最小変速比(最大変速状態)の数値ってどう測ってもサービスマニュアル

記載値よりはるかにハイスピードプーリーだったりしますよ。

ライブDio-ZXにしても下は2.850までローギヤではありませんが、上は0.860でほぼ合っているのにJOGは

洒落にならないハイスピードプーリー車である、という事を今更ながら記しておきます(泣

こういうのも「数字での分析」を行わないと分かりえなかった事ですからねえ_| ̄|○



そしてここからはちょっとだけそのボス+シムワッシャーのセット方法を記しておきます。

これに関しては私、体感も計測も分析も計算も全てを用いてセットを決めておりまして、基本としては

実走行にて、


走行するサーキットの一番長いストレートエンド地点において


最大変速するかしないかのギリギリを狙っていく


といった点が最も大切です。

基本中の基本で、無段変速のスクーターという乗り物は「一番パワーの出ている領域を可能な限り長く

使って加速していく」事ですから、仮にエンジンのピークパワーが7000rpmで発生しているのであれば

ストレートエンドまではずーっとその最大パワー7000rpmを維持して加速するのが最良、という事です。


なので、ストレートエンドに差し掛かる前に変速が終わり、エンジン回転数が上昇していく状況であった場合

これはすでにパワーダウンして行きつつある領域を使って加速しているのと同じであり、効率としては

非常によろしくないんですね。

…自身のエンジンで、「到達出来る回転域まで"使い切りたい"」気持ちは分かりますがそんな事をやっても

速さには繋がらないです、と断言しても良いので…


逆に、ストレートエンドに到達しているのにも関わらずまださらに変速し続けている、といった状態もあまり

よろしくはなく、稀にFNのJOGでも見られる光景ですね。

これもエンジンがノーマルであるが故、あまりにもハイスピードプーリー過ぎる状態を短いボス長で

作り出してしまうと、逆にエンジンパワーが喰われて「変速回転数は変わらないが加速も最高速も鈍る」といった

分かりづらい状態にも陥るので注意が必要でしょう。

とはいってもこれは手法としては簡単な話であって、まずボスをノーマル長にして走ってみて、ストレートエンド

到達前にタコメーターや体感で注意すればどっちに振れば良いのかはすぐ分かります(笑

かつ、私の場合はスピードメーターも併用し、「ここで何km/h出ているか」も判断材料にしている事は

今更言うまでもありませんね。

「変速過剰になっている」状態をサーキットで見極めるのはスピードメーターがかなり役立った、とは記して

おきたいと思いますよ。


で、これに関してはベルトの幅が違うとか、長さの差がある等でもセットは変わってきてしまうのですが…

こういった場合、基準とすべき方法として「実回転計測による変速比計測法」があります。

…呼称は私が勝手に付けましたが、要は駆動系を組んだ状態にて、プーリーを何回回せばドリブンユニットが

一回転するか、をチェックしておくだけです(笑


これは「スクーター改造」を読まれている方には今更の手法だと思われますが、一応リンクをば↓

(※別タブ&別窓展開推奨)


・変速比の計測その1 「実回転計測」と「プーリースライド量」の把握


詳細はここに記していますが、まずは前述のストレートエンドでちょうど最大変速する様なボス調整を行い、

その上で駆動系の最小変速状態の「実回転数値」を計測しておくワケです。

ちなみに私のライブDio-ZXにて、全開区間のかなり長い地元カートランド四国にてストレートエンドで

ちょうど最大変速するセットの場合、この実回転計測の数値は「2.2〜2.3」あたりになっていますね。

(※あくまで「発進時」の変速比の数値です)

ライブDio-ZXのサービスマニュアル値だと「2.850」なんですがこれは新車を計測してもここまで正確には

なっておらず、実計測で「2.7〜2.8」程度なのでそれと比べても滅茶苦茶なハイギヤ発進です(汗

当然、その分最大変速時にはハイスピードプーリー化となる理屈で、この程度なら物理的限界も訪れません。


しかし、その位しないとボスを短くした意味合いでのハイスピードプーリー化にてJOGとタメを張る事は

難しく、カートランド四国においてはノーマルメーターであれば針が下までカチ当たってまだ伸びる、と

いったレベルまでスピードが出るので、0発進は捨て去るしかないのも悲しいですが(泣


で、大切なのはここからでして、その「目的のサーキットにおけるセット」を施した状態にて、実回転計測値を

記録しておき、ベルト等の寸法が変わった場合でもシムワッシャー調整にて同一の数値を目指す事になります。

これはベルトの幅が磨耗した時にも有効でして、シムワッシャーの厚みを変更してみるのも良いですが実際に

実回転計測値に合わせて調整してやれば、ベルトの寸法がどうであっても発進時の変速比としては全く同一に

なります、と言うか出来ます。


もちろん、その場合だとベルトの寸法が異常に異なる物を投入した場合だと、最大変速時のベルトの余裕が

変わったりしてしまう状況もありえない事は無いですが、限定流用のFN仕様であればそこまでおかしな物を

投入する事自体ありえませんし、ボスにベルトの裏が当たるとかドリブン外周からはみ出るとかの状況は

加工を含めたチューニング車でないとまず無いので、あくまで「求める部分の数値化」として把握しましょう、

というだけですね。

仮に実回転計測で「2.5」がベターなセットであったならば、寸法の違うベルトを入れたとしても基準としては

実回転計測で同一値になる様にボスをセットしてからがスタート、といった基準が取れるという事です。

もちろんこの場合、最大変速時の変速比としてはベルト長が異なる場合は同等とはなりませんが…とりあえず

これ以上突っ込むと難しい話になってくるので割愛します。


もっと言えば、意味も分からずまぐれ当たりを狙ってベルトの外周長を変更するのは全くもってメリットが

無いどころかワケが分からなくなるだけ、とも言えますし当てずっぽうじゃ楽しくもなりませんし。

もちろん現実的には駆動系ってこんな簡単では無いのですが、今回はあくまで「FNマシン」といったカテゴリで

運用におけるコツの一つとしてのピンポイント解説なのでよろしくです(汗

ベルトセット状態でベルトかかり径を把握し、15度の面角度であればプーリースライド1oにつき約3.7φの

ベルトかかり径の変動があるとか色々ありますがそれらは別途「スクーター改造」の方をお読み下さい(笑



次にWRですが…これはあまり重量等を記しても意味はない事はここをわざわざ読まれる皆さんであれば

重々承知の上だと思われますが、一応さわりだけ少々。

まず、WRの重量をデータとして残していくにはタコメーターは必須なのは当たり前ですが、それに加えて

前述の様に劣化しておらず、安定しているプーリーを用いる事が大前提です。


…これは至極当然なのですが、使いまわして劣化しているプーリーとそうではない新し目の物であれば

同一車で同一WRを入れても冷間、温間時双方のも含め変速回転数って全く異なってしまいます。

なのでこれではデータにすらなりえませんし、全くの無意味だと断言出来ますね。

で、具体的な手法としては簡単至極なモノなのですが…WRってのはあくまで「変速回転数」を決定し、

どこの回転数を維持して加速するか、を決める物ですから…まず必要なのは


自分のエンジンのピークパワーは


何回転あたりに出ているのかを


「自分で」しっかり把握しておく事


になります。


これが分かっていない場合、変速回転数なんてどこに合わせて良いのか分からないのと同じですから、

ぶっちゃけるとWR重量なんて深く考えず、駆動系温間時にピークパワー領域にて変速する様に放り込めば

それだけでOKなんですよ(笑

が、同一マシン同一構成同一ピークパワーの別マシン同士で、同一変速回転数にするのにあまりにもWR重量が

軽くないといけない、といった状態ならば、それはエンジンパワーが小さい証拠でもあります。

これもトルクカムを引く力と作用力云々なので詳細はここでは割愛しますが、仮に7000rpm変速を行うのに

A車のWRが36gで、B車は30gなのであればこれはA車の方がエンジンパワーは優れている、と言えますので。

あくまで参考までにどーぞ。

ちなみに私の現状のマシンであれば、決勝用プーリーならWRは36g程度で7150rpm前後の変速となってますね。

そして4〜500km程度全力走行すると練習用に格下げになります。

(※いつも言ってますが私はパーツ劣化は使用時間ではなく走行距離で管理します)


一応の基準としては、ライブDio-ZXで完全メンテされている真っ当なレーサーである場合だと、おおむね

7000〜7200rpmあたりにピークパワーが発生するはずです。

このあたりから200rpmとかズレている場合だとそれは何かの構成がおかしいとも言えますね。

実際にはサービスマニュアル値みたく6000rpm台でピークパワーが出る車両なんて私は見た事ありません。


もちろん、


この値はあくまで「最大(ピーク)パワーが出る回転域であって

実走行で到達出来る「最高回転数」ではない


といった点は絶対にお間違え無き様にお願いしますね。

「実走行で到達出来るMAX回転数がイコールでピークパワーでは無い」のでご注意をば。


これを確認するには色々な回転数に変速回転数を合わせてみて、一番加速の良い所を見極めるだけ、と

いった至極簡単な手法ですね(笑

「最終コーナーを仮に40km/hで立ち上がってきて、コントロールラインまでに何km/h出ているか」といった

シンプルなスピードメーター計測法が一番分かりやすいです。

なお、こういった場合には「発進加速」を勘定に入れるとワケが分からなくなるので0発進からの到達速度を

目安にする事はやっては駄目ですよ。

ピットロードとかで0発進の感触ばかり確認しても「加速」に対してはほぼ意味が無いという事です(笑



そして駆動系の最後にクラッチとか…他の部位のコツを少し記しておきます。

クラッチシューに関しては俗に言う「480g」シューを用い、クラッチスプリングは流用品においてはノーマル以上の

物が無いのでノーマルのままですが、正直これでは足らないのですが流用範囲としてはどうしようも無いので

これで我慢するしかありません(泣

なお、この軽量な「22535-GAH-307」の「シュー単体」は、2016年現在ではすでにライブDio-ZXノーマルの

くそ重たい「22535-GAK-305」に統合されてしまっているのでもう新品入手不可能です_| ̄|○

…これは別に中古でも良いので探しておくのがベターですね(泣


後、クラッチアウターに関しては内径がクラッチシューと馴染まないといけませんが、おかしな焼けや

歪みがなければOKです。

もちろん、クラッチシューとアウターは異なった組み合わせを行うのはご法度で、ずーっと同じままの

組み合わせで運用しましょう。


トルクカムのグリスアップ等に関しては、ある程度の走行ごと(200km程度)に行えばOKでしょう。

もちろん、オイルシールはともかくとしても上下のOリングはかなり圧着状態になっている物ですから

数回バラしたりしたら交換しておくのがコツで、これを怠るとグリスがはみ出てきて痛い目を見ます(泣

高性能なグリスを使うのも手ですが、走行直後の温度にてあまりにも柔らかくなっていなければOKなので、

そこまでこだわる必要はありませんし、かつトルクカムの作用力はグリス程度の抵抗で動作が鈍ったりは

しないので、適量(15g程度)をしっかりトルクカム溝まで詰め込んでおけば大丈夫です。

(※規定ではシャフト側にのみ5g程度ですが溝&ピン側にはそれ以上詰め込むべきです)

私はここに関しては、グリスは「質より量」だと考えてます。


ドライブフェイスは、中古だと下手に力を掛けられているモノだった場合には回転させると外周部分が

ぐわんぐわんとひん曲がっている物もあるのでチェックは必須です。

多少サビていても良いので、正常でブレや曲がりの無いクランクシャフトにくっつけてみて回転させ、

目視で確認しておくべきですね。


そして、今の時代であればトルクコントロールが出来る「電動インパクトドライバー(レンチ)」も普及しているので、

フェイスナット脱着に関しては電動インパクトを用いるのがベターです。

14.4〜18Vクラスであれば規定トルクに近い6kg-m程度をかける事は不可能では無いので。

キジマタイプの文鎮型フェイスホルダーでも悪くはありませんが、あれはあれでしっかりとクランク

ケースにボルト留めでセットして使わないと簡単にフェイスやクランクシャフトをひん曲げるので注意です。

…とはいってもココを読まれる方にそんな適当作業する方は居ないと信じてますが(汗


ファイナルギヤに関してはたった1丁の違いではありますがGダッシュ用カウンターギヤがあれば

良いのですが、もはや新規入手も難しくなってしまいましたね。

が、これはこれでボスワッシャー調整が出来る前提があるので、そこまで必須ではないとも思えますし

手に入るならば投入しましょう、という事で宜しいのでは無いでしょうかね〜



と、駆動系の解説は簡潔にしたつもりでもかなり長くなってしまいましたが…(汗

はるか以前に記した物とはちと違っている点もありますが、なんともはややはりノーマルのバランスと

いうモノは優れていた、という結論にならざるを得ないというのもある意味面白いものです(泣

特にボス長の調整が可能になった、といった点はかなり大きくメリットが出ましたし。

私、ライブDio-ZXのFNマシンにはそれなりの労力等をかけてきたハズなんですが、結果的に落ち着く所は

純正構成ベースの味付け程度のみであった、と…

私の持論の一つでもある「メーカーさんは馬鹿ではない」というのが骨身に染みた一件だったのかも

しれませんねえ〜


なお、ノーマルトルクカムを用いたセット以外だと、「ZXクランクのまま、一部小径駆動系構成を用いる」といった

ちょっと亜流の仕様も以前には研究した事があるのですが。

プーリーだけはライブDio-ZXノーマルのGBL-700とHG刻印ランプを用い、15o幅の細くて短いベルトを33mmの

ボスに組み合わせ、トルクカム&ドリブンフェイスは非ZXの「小径」の物を用いるといった構成ですが。

過去にはこれを好まれる方もおられたかとは記憶していますが、私としてはそこまでメリットを感じは

しなかったのと、これを新規で行うとなると完全に1からのパーツ調達等あれこれとややこしい事も必要な為、

やってやれない事はありませんが推奨はしません、という事で…

そもそも、それをやってしまうとZXである意味合いがかなり薄れてしまう事もあるので好みの問題とも

言えますね(汗

…可能であればどなたか詳細に分析して下さい(笑


・エンジン関連等


初期型ライブDio-ZXZXエンジン


さてさて次はパワーの要、エンジンに関してですがこれは腰上&腰下といった定義とします。

腰下に関しては初期型のマニ4本留めタイプの方がリードブロック開口部が大きく、パワー的には優れていますが

現在(2016年)では純正クランクシャフトが廃盤の為、新規に組み立てる事は現実的ではありません。

中期型以降のマニ3本留めタイプのクランクシャフトは、排ガス規制後の最終型の物が互換性があり、かつ形状も

いける範囲なのでメーカーでも互換品として現在でも発注は可能です。(13000-GBL-881に統合)

ただしお値段が25000円位しますが(泣

なお、当然ですが「ZX」でないと駄目なのは言うまでもありませんし、それ以外のモデルだとクランクシャフト

座面寸法が異なる為に駆動系パーツだけ無理に押し込んでもまともに動作しません(笑


で、ざっとした仕様…と言いますかあまり記す事ありませんが仕様パーツは下記の様な感じです。




まずクランクシャフト、これは中古を再利用する場合はシャフトの曲がりが無いか、コンロッドの縦横ガタが無いか、

いけそうであれば検芯&芯出しを行って使います。

コンロッド大端部はホンダ系スクーターの場合、稀に損傷する事があるので注意ですし、縦のガタがあっては

絶対に駄目ですが中古なら横方向のガタはある程度あっても妥協しましょう(汗

芯出しに関しては、これはきっちりとスクーターと言いますかDio系クランクシャフトの見極めを行えるところに

依頼するのが一番です。

別のコンテンツの腰下の見極め方にも記しましたが、単なる内燃機屋さんではそのあたりのコツやノウハウを

持っていない事もあるので…もちろん私はいつでも承っておりますよ(@一律3000円)


今は貴重な純正クランクシャフト(泣 こればかりは2stDio系のスペシャリストで無いとなかなか判断が難しいですね(笑

なお、芯出しを行う場合もあまりに大端ピンが「緩い」場合は数を叩きすぎても駄目です。

純正新品だと3/100〜7/100程度までの触れ具合を見た事がありますが、7/100も触れているとさすがに修正必須でしょう。

アホみたいに精度にこだわる必要性はありませんが、せめて3/100程度は欲しいですね〜



クランクケース、これも別途コンテンツに詳しいのでそちらを参照して下さい。

今の時代だと、よほどの超幸運で無ければ中古エンジンそのままの状態がノーマルレースで真っ当に戦えると

いったLVではありえない為、そんな奇特な人いないとは思いますがFNをライブDio-ZXで走ろうとするならば

腰下はきちんと見極めた上で整備し直して使いましょう(汗

と言うか普通にストリートで使うとしても得体の知れない腰下なんて私はイヤです(爆

なお余談ですが、発見しづらい腰下といえどもインチキはご法度なので、下手な加工等を行っては駄目ですね。

バラしてバリとかあったりしたら取り除きたくはなりますがそこはぐっとこらえましょう…


腰下の組み方に関しては昔のコンテンツと変わる点はありませんが…組み立て後のクランクシャフトにガタを

出したいからと言って、ダウエルピンを削って組んだりするのは駄目です。

そもそも、そんな事をやってしまうと一度の転倒でクランクのセリがおかしくなってしまいますし、これは

フルノーマルでも運が悪いとありえる事なのでそういう場合は素直に諦めましょう(泣

一応私も昔からこの手の腰下O/Hとかの依頼はお受けしてますんでご興味ある方はご一報をば。



次にシリンダーですが、これは規制後のシリンダー上面が盛り上がっている物意外であればOKです。

ライブDio系はグレードによるシリンダー構成の差は無いので規制前品ならベースとして使えます。

大事なのは選別でして…ポイントとしては


・シリンダー内壁の減り具合 (ボアゲージで計測)

・排気ポートタイミングと開口部上半分の形状

・掃気ポートタイミングと開口部&通路内のバリ具合

・シリンダー全長 (圧縮比に関係)


といったところでしょうか。

まずシリンダー内壁の減り具合ですが、これは純正新品だとおおむね40.000φを基準とした上で、公差は

プラスマイナス0.01程度あるのが平均値です。

とはいってもこれは精密ホーニングをかけるワケにもいかないので…内径計測において減りが0.02程度までなら

なんとか実用範囲内である、と私は分析していますね。

すなわち内径で40.02φ〜を越えているとちと減ったかな、といった感じでしょうか。

それ以上減っているとピストンリングを新品にしてもパワー感の戻りが小さめになってきます。


中古で良いのであると便利です これは「シリンダー(ボア)ゲージ」ですがこれを用いて内径を計測します。

縦横斜めx2を上中下の3箇所で計測して平均値を出しますが、大事なのは「リング摺動範囲」の減り具合ですね。

キズに関しても多少は仕方ありませんがリングの摺動範囲に傷が無い物が理想でしょう。

とはいっても…キズってのはあるとその時点で微妙なのがレーサーエンジンではありますんで(汗


ちなみに、ノーマル車でのシリンダーの内壁の減り具合、これはおおむねですが8000〜10000km程度の走行で

0.01φ、すなわち1/100o減るかどうか、といった所です。

が、オイルが粗悪だったり無茶な全開走行ばっかりしている場合だと減りは加速度的に進みますね…

この減り具合によってピストンクリアランスが変わりますが、ノーマルエンジン前提であればピストンの

形状や材質を鑑みても、規定の3/100〜5/100以上あれば心配はありません。

私はピストン側が減ってきても平気で8/100とかで使いますけれども(笑

これも他のコンテンツで解説していますが、ピストンとシリンダーが物理的に擦れあっている状態にまで

陥るのはすでに焼き付き寸前であり、「タレ」ではありませんので注意です(笑

むしろ、ノーマル構成エンジンを焼き付かせるなんて逆に難しいですけれどね…


次にポートタイミング等の計測ですが、これも他コンテンツのリンクをまず貼っておきます↓


(※別タブ&別窓展開推奨)


・実際の「ポートタイミング」測定方法


これには道具としてノギスとスコヤ、あとマジックが必要になります。

具体的にはリングの付いていないピストンを用い、ピストンリングをシリンダーに押し入れてやり、その

ピストンリングをポートの開口部まで寄せてやった上で、シリンダー上面からノギスで距離を測ります。

その上で、排気ポート開口部と各掃気ポートの開口部までの「高さ」を計測して記録していきます。

もちろん、これは高ければ良いというモノでもありませんがあくまで「純正誤差」を狙っていくのであれば

排気ポートはとにかく高く、掃気ポートは高さはそれなりでも開口部にバリの無い物を選ぶべきでしょう。


参考までに、「高さ」で表現したポートタイミングの許容範囲としては


・排気=24.5o〜24o以上が理想

・第1&第2掃気=31.5o以上が理想

・第3掃気=32.5o以上が理想


といった感じです。

とはいってもこれはあくまで純正誤差を狙う物なのであまりこだわっても仕方ありませんし、ノーマルの

特性であればピークパワーが出る箇所の特性としては200rpmも変われば御の字な程度なので(笑


なお、ライブDio系に限りませんがシリンダーの「鋳型」って右半分と左半分で同一では無いので、掃気

ポートの開口部高さって絶対に左右で異なってますね。

右が高くて左が低い傾向ではありますが、これは加工しない限り修正は不可能なので…


これは加工出来る人じゃないと分かりづらいかも ここで一例を出してみますが、これは排気タイミングではなく排気ポートの弦長の最大開口部から「上」の部分を目視しています。

…別に石刷を取っても良いですがこの位なら見ただけでも駄目だと分かりますよね(汗

「頂点部」は排気ポートの真ん中に位置してはいても、そこからの「肩」の部分があまりにも歪です。

リングが引っかかりそうな勢いでヘタクソに加工したみたいな歪み具合なので…


こういうのはいくらタイミングが速くとも避けた方が良いですし、実際パワー感はちと低い傾向にはなって

しまいます。

多少減っていても、排気ポート上半分の弦長があり、かつ歪みの小さい物の方がベターでしょう。

もちろん、レギュレーション上面取り加工等も行ってはいけないので修正はインチキですしね。


掃気はバリが大敵 こちらは掃気ポートですが、これもタイミングではなく見た目のバリのチェックです。

こうやってリングを入れてみると、四角形であるべきポート出口の歪さって視覚的に分かりやすくなるんですよね。

…これは言うまでも無く右の第2掃気がかなりヤバい状態ですし、掃気噴射角度的にもこういう風に埋まっていては不味いです。

第1掃気の「後方」も「下側」が狭くなっているのはあまり好きでは無いですねえ…


とまあ、実際にはこんなに細かく言ってるとキリがないのですが、あくまでエンジンとしてのメカニカルな

動作原理の視点から見ても良好な方向へ向いている物を選びたい、というチューナー視点です(笑

とにもかくにも、あまり開口部がおかしな物で目で見ても分かる位の物は避けましょう、という事で…


そして次は「シリンダー全長」ですが、これは純正誤差とはいえヘッドガスケット面〜ベースガスケット面まで

「58.2o」を基準としていますが、プラスマイナス0.1o程度の誤差はあります。

これはヘッドガスケットが0.2o厚ですから、それ位の公差は存在しているという事ですね。

可能であれば定盤かガラス板の上にシリンダーを逆さまにして設置し、ヘッドボルト穴の深さを計測すれば

シリンダーの全長が分かりますが、ハイトゲージとかあれば一番良いですね。

が、これはあくまでシリンダーの全長によってピストン上死点時の「肩落ち」がいくつあるのかの差を

見極め、後述のプラグによる圧縮比UPの補正とする、といった感じでしょうか。

…ぶっちゃけこれも運要素なのであまり気にしなくとも良いといえば良いです(爆


とまあ、シリンダーに関してはあまり減っておらず、かつポートにバリが少ない物を選定し、その上で

排気タイミングが速い(高い)なら良好です、という事で。

ちなみにシリンダー全長に関しては、ここが0.2o違っているとポートの高さもそれだけ違ってくるといった

点は注意ですね。

…私は計算ツールを用いて実際のクランク角度でのポートタイミングは一応算出したりしていますよ。



次にピストンリングですが、これは純正にて2種類ありますが、製造メーカーの違いではありますが実際に

リングそのもののしなやかさが異なっているという特性があります。

「13010-GBL-305」が日本リング製、「13010-GBL-306」が帝国リング製ですね。

これは正直どちらでも良いですが、慣らしの少なさとしなやかさを評価して私は305しか発注しません。

なのでひょっとして今はもう306の方は廃盤かもしれませんがご了承下さい(汗


そしてリングの劣化に関しては、リングをシリンダーに入れた状態での「合口隙間」を計測します。

これはピストンを用いてリングをシリンダーに入れ、リングの合口をシクネスゲージで測定します。

リングのメーカーや誤差にもよりますがあまり減っていないシリンダーに入れた場合はリングが新品時で

合口隙間は0.15o程度になっており、これが0.25o〜とかまで開いてくると明らかにパワーダウンを

感じてきますね。


なお純正合口規定値は新品状態で0.15〜0.25mm、磨耗限界は0.40oなのですが…

ノーマルでストリートを普通に乗っていても、0.40oまでリング合口隙間が広がるまで磨耗するには

走行5000km以内で到達する事もあるのですが…これの交換時期を守ってる方って一般的にはどれだけ

おられるのかなと思ったり(汗


合口隙間計測は大切です これは撮影なのでシクネスゲージが傾いてますが、ホントはちゃんとやります(笑

0.01o単位とかで無くても良いので、せめて0.05o単位での管理&把握は行っても良いでしょう。

ちなみに運が悪いと新品リングでも0.25oとか隙間があるのにも当たった事がありますが(泣

そういうのも、毎回ちゃんと測っていないと分からないものですからねえ…これもノウハウの一つでしょうか。


なおサーキットオンリーだと合口隙間0.25o程度まで磨耗するには走行距離でおおむね500km〜程度でしょう。

こういうのをちゃんと計測して寸法管理しておくと、やたらめったらパーツを交換して財布が軽くなるのを

防げますし、パーツ単体での劣化や磨耗をきちんと判断出来る様になるので必須のスキルかな、と私は

考えておりますです。


あ、リング単体だとリングの前後幅をノギスで計測すれば、あまりにも減っている物とそうでない物の

寸法差程度はチェック出来ますね。

新品時に比べ0.1oとか減っていると劣化気味といった感じでしょうか。

これもリングの前後幅をいくつか新品状態で測っていないと比較は出来ませんが、劣化&磨耗の目安にはなるので

参考までにどうぞ。


ピストンに関しては純正新品だと、下から5o程度の箇所の寸法は39.940〜970o程度のばらつきが公差として

存在しますが、ノーマルエンジンだと正直気にしなくても良いですしピストン自体品番統合されているので

純正品番で選びようもありません(笑

(※計測にはマイクロメーターが必要です)

むしろ、新品時に寸法を計測しておき、メンテ時に改めて計測する事を心がけていれば、前述の

リングの合口隙間の計測と同じで、劣化しているのかどうかの判断が出来ずに無駄に新品交換しまくると

いった事を防ぐ事が出来ます。

コスト的な面でもパーツの寸法管理ってとっても大切でして、もはやノーマルエンジンの運用とは完全に

かけはなれているとは私も思いますが、それ位やらないと駄目な位、純正部品の高騰はダメージがでかいとも

言えますのでね_| ̄|○

余計なパーツを買うコストを鑑みれば、その分タイヤとかプーリーに回せれば御の字でしょうから…

仲間内で計測器具を購入しておいても、長い目で見ればコストダウンにはなるはずですよ。



次に余談的にシリンダーヘッドですが、これは他のコンテンツで紹介している様にEリーチのプラグを用い

スペーサー等を噛ませて多少の圧縮比UPを行っています。

もちろん、排気ポート高さ等によっても圧縮比は変わるので一概にいくつのスペーサーが良いとは言えませんが

基本的に標準的なBR○HSをライブヘッドに入れた場合、容積は「6.0cc」となります。

容積のみで言えば私はこれを「5.7cc」程度まで減らしていますが、圧縮比計算を行うとおおむね

「7.5:1」程度の圧縮比になっている状態で運用していますね。


が、この場合はかなり無理矢理な圧縮比UPの為、1からヘッドをこしらえられるチューニングとは異なり、

あまり圧縮比を上げすぎると不味い傾向も出るので注意です。

圧縮比を計算したい方は他のコンテンツの手法でお勉強して頂きたく思いますが、ざっとした数値として

モノを言えば、R-7376とかEGP等の沿面風味Eリーチプラグならばスペーサーは「4mm」位が安全圏かなと。

6.5oだとノーマルHリーチと同じ位というのが定説ですが、プラグ先端部の形状も加味すると0.2ccとかは

変わる事もあるので、出来ればヘッドにプラグを刺した状態で容積測定を行うのがベターでしょう。

ホント、エンジンに関してはチューニング思考になっていますがこれはこれで手段の一つではある、と

いう事で…(汗



次にマフラーですが、これは規制前かつ初期型の物を推奨したいですね。

年式として94〜96年式までのモノはほんのわずかではありますがパワーに優れる傾向があるので、可能で

あれば出来るだけ程度の良い初期型マフラーを選ぶべきです。

こちら、見分け方としてはエキパイ部分に補強があるか否かがポイントになりますが…初期型で

あるからといってもそこまで絶対的なメリットは無いので、内部の程度が悪いと駄目なので注意です。


なかなか程度良いのは無いです これは中期型のマフラーで、このタイプはエキパイ部に補強が入っています。

初期型ではこれがありませんので転倒で曲がりやすかったりはしますが…スズメの涙の性能差には換えられません(泣

ちなみにZX専用のステンレス巻きの物と、STDグレードの黒い筒のタイプは見た目こそ違えど内部構造は同じです。

見た目を気にしないならばSTDモデル用でも実際に使ってみて感覚が良ければそっちを使うのもアリでしょう。


ライブDio系ではなくスーパーDio系だと明らかにグレードによる差異はあったのですが…

あ、規制前ライブDio系でもライブDio「チェスタ」のマフラーだけは構造が異なり性能的にはちとイマイチに

なるのでこれは避けましょう。

簡単な程度の把握としては、エキパイ部に口を付けて息をふーっと吹き込んでみればその「抜け具合」で

ある程度は判断が出来ますが…これであからさまに正常な物より息の抜けが悪い、となればそういった

モノはアルカリ洗浄剤等で洗っても最大の効果は発揮しづらいので避けた方が無難です。


ちなみに2016年現在、3年前位までは規制前中期型のマフラーがまだ新品で発注出来ていたのももはや

廃盤となっており、中古をあさるしか入手の手段は無いのでなかなか難しいですが(泣

別に中期型でも良いので、実際に取り付けて走ってみてから良否を決めるのが一番良いでしょう。

後、中古品だとマフラーの出口部分の溶接が割れてくる事が多々あるので、これだけは修理しておくのが

良いですね。



さてさて、ざっとではありますがこれにて駆動系とエンジン廻りの解説を終えたいと思います。

可能な限り不要な部分は排除してまとめたつもりですが、本当に全て記していくとキリが無さすぎるので

最低限度の点のみとしましたがご了承下さい(汗


もちろん、あれこれとやってみてそれなりの構成が出来た場合でも、FNクラスマシンとしては最大の脅威である

3YK型JOG相手だと、余裕のあるリードを奪うLVにはなりえないといった点は昔と変わりません(泣

とはいっても、2000年台前半頃の勝負になりづらかった頃よりはかなり真っ当な性能差にはなってはくるので、

諦めずにだらだらと開発&分析を続けた甲斐はあったと自負しております(笑

基本、テクニックが同じ位で体重も同じ位の人同士が3YK-JOGとライブDio-ZXのFNマシンで競ったとした場合、

どうあっても勝てないレベル、といった性能差ではないとだけは断言出来ます。

JOGの3倍位の努力が必要だったライブDioが、2倍位の努力で済む様になったといった感じでしょうかね〜

もちろん、ある程度性能的に回り(居ればですが)と同等になりたいのなら最初から3YKを選んでおくべきであり、

AF35ライブDio-ZXだと茨の道には変わりない、といった点もお忘れなき様にお願い致します。


ではでは次回は点火系とか足廻りとか、そういった所に言及していきたいと思います。

次回はそこまで長くないはずなのでよろしくです(汗


「スクーターレース」に戻る