クランクシャフト&ケース=「腰下」の当たり外れについて



さてさて…今回は久々のこのコーナーの更新になるのですが、もはや時は2016年となっていまして

正直、今更感も大きいのですがある意味ネタバレの様な感じでの内容としてみたく思いますです(汗


と、内容は表題通りでして、腰下すなわち「クランクケース&クランクシャフト」に関しての内容と

なるのですが、一応2stスクーターノーマルレーサーの「FNマシン」といった範疇も扱っている当コーナーでは

2st原付一種スクーターの腰下、といった解釈でお願い致しますね。

もちろん、レーサーではなく通常の車両においても知識の流用は効きますので。

こういった事柄ってのは別にノーマルでも街乗り車でもレーサーでも「気にすべき点」というのは全く

変わらない物ですし。

これは「スクーター改造」に入れようかと迷いましたが当サイトに訪れるスキモノの方であれば間違いなく

どっちも見るだろう、という(以下略


なおこの系統のお話は過去にも何度か掲示板等で出してきた話題なのですが…

現在ではもはや時代が変わっている、という事もあり、前コンテンツのキャビーナCDIではありませんが

「FNマシン」への知識の流用としては私なりの最終的結論といった感じの事を書き連ねてみたいと思いますです。



※いつものコンテンツ内目次リンクです。




・腰下の「当たり外れ」の概要について


さて…まずは表題としての「腰下の当たり外れ」なのですが、これは


腰下以外の部分が全く同等の仕様であった場合


「ノーマルエンジン」としての


パワーがきちんと出せているか否か


といった事を表している解釈とします。

これはエンジン本体の加工や調整が一切出来ない、「ノーマルクラス」のレースにおいては

それなりの所まで突き詰めた場合には気にしていく事になるのが基本になっています。

レーサーではなくとも、腰下を組む前に加工修正する人なんてなかなか居ないかもしれませんが…

目視で分かる位にクランクシャフトがブレブレとかでは性能とか安定性以前の問題ですしね(汗


で、その腰下の良し悪しですが…「スクーター改造」コンテンツ内の「私的、クランクシャフト分解&

組み立て方法」等でも記している様に、基本的には


組み付け直後にクランクシャフトを揺すると適正な「ガタ」が出る物


といったひとつの目安があります。

これは腰下、と言いますか縦割りで左右合わせのクランクケースですから、左右のクランクベアリングの

入る部分の位置がズレていたり、ベアリング挿入部の垂直がわずかに出ていない等の「純正部品の個体差」に

よるところが一番の原因でして、少なくとも無加工、無修正が前提では完全に運任せになりますね。


こういった所は当然、通常運用ではあまり問題が出ずに1万km位は普通に乗り続ける事は出来る位の

メーカー側の設計における精度等はきちんと出てはいますが、中にはそうでもない物もある、と…

なので、基本的には「上手くクランクシャフトを組み付ける事が前提で、かつ直後にシャフトのガタが出る」

いった物を選ぶのがベターなのですが…正直これはクランクケースを新品で買ったとしても実際に一度

「しっかりしたクランクシャフト」を組み付けてみないと分からないものであり、こういうのを探す事も

FNマシンならではのシビアさになっている、といった面は否めませんね_| ̄|○


が、そのあたりの判断基準、と言いますか見極め方についてを2016年現在の私の経験と知識において

改めてまとめてみたくなったのでそのあたりを羅列してみます。

…FNマシンとしては今更誰が役に立てるんだ、というのは(以下略


ではまず、これは他でも解説していますがクランクケースの「最低限度」の劣化具合といった点の

チェックを記してみたいと思いますです。

とはいってもこれは簡単でして、


腰下を分解してクランクベアリングを熱膨張で抜いた後

ケース側ベアリング挿入部を目視し

「ベアリングが共回りした跡」や「回転方向のキズ」が

無い事を確認する


という実に簡単な判断になります。

「当たり外れ」は別としても…以前に無理な手法で腰下を組まれているとか、ケース側の異常劣化にて

ベアリングが「共回り」した形跡があるとちとアウトでしょう。

もはや年式的には多少は仕方ない場合もありますが…FNやFPマシン等においては

レギュレーションにおいての縛りで、クランクベアリングを接着剤

(ロックタイト等)でケースに固定してはいけない」といった規則がある為

劣化品クランクケースはあまり使わない方が良いですね…


クランクベアリングの共回りの形跡 これはヤマハ系の中古クランクケースの「穴」の部分です。

回転方向のキズがかなり酷いですし、何度かベアリングの脱着を繰り返しているケースなのでかなり劣化していますね。

クランクケースを割る時にはクランクケース本体もある程度温めておけば、ベアリングがケース側に残りづらくなるので私はそっちを推奨したいですよ。

バキバキとベアリングを打ち抜いたり、ケースに残ったベアリングをプーラーで引き抜くのはこういった点に良くありませんので…


クランクベアリングの共回りの形跡 こっちもヤマハ系のクランクベアリングですが、これは分かりやすいですね。

見事なまでにベアリングが共回り、というか空転した形跡が「外輪」に現れています。

ここまでの状態になっていると新しいクランクベアリングをケース挿入するだけでは近い内に同じ事になりますが…

これって結構パワーダウンする上に他の箇所の寿命も短くなるので不味いです_| ̄|○


と言いますか、こんな状態にまで来るともうクランクケースそのものの寿命ですし、無駄に何度も何度も

クランクケースを割ったり、クランクベアリングを無理に交換しているとクランクケース本体が駄目になります…

もうクランクケースの入手が困難な車種の場合はこういった状態でもロックタイトでクランクベアリングを

固定して運用するしかありませんが、中強度以上のロックタイトで接着した場合だと、次回の分解時には

熱膨張でクランクベアリングが「落ちてこなく」なるので作業的なコツも必要になりますんで(泣


とまあ、クランクケースのベアリング穴、という物は劣化が結構見られる物でして、これが不思議な事に

ホンダ2st系エンジンではそこまでありませんが、ヤマハ2st系エンジンだと一度も分解した事が無い様な

ノーマル街乗り長距離中古エンジンでもバラすとこうなっている事が結構な確率であったりしますね。

なのでクランクケースの程度には最低限度の気遣いが必要です、という事で…


あとおまけになりますが、FNやFPレギュレーションではご法度ですが、一時流行ったDio系用途の

ホンダ特殊クランクベアリングの代替品、台湾系のTPI製品とか欧州製品を用いる手法ってのが

ありました。

…この手のベアリングだと「玉」がでかいのでベアリングそのものの耐久性は純正特殊品よりも

上回っているのでは、という事で投入する方も多々おられたかと思われます。

私も何度も組み付けを依頼されたりもしたんですが、その後の運用レポートや長距離での劣化具合の

結果だけで言えば正直この手のブツを使っても明確な耐久性&信頼性のUPには繋がらない、といった

結果になっていますね。


改めて表記しますが、


社外互換品クランクベアリングにしても


「クランクシャフトへの気遣い、作業、運用」等が


不味ければ、その見た目程の耐久性UPは望めない


ホンダ純正特殊クランクベアリングが頼りないのは事実だが


クランクベアリングを破損させる要因においては


「ユーザー側」の取り扱いに起因する事も多い


という事です。

後述しますがクランクシャフトそのものがひん曲がっていたりブレまくっていたりしたら

そういった「違う」クランクベアリングを組んでも無駄にしかなりません。


だからこそ、前述した様に短期間にやたらめったらクランクベアリング「のみ」を交換していても

耐久性や安定性の向上にはイコールで繋がりませんし、いくら「良い」クランクベアリングを

用いても、ドライブフェイスの脱着等が適当だと全く意味を成さない、と。

後、オイルをケチるとかも私から言わせればただの阿呆だと思いますし。

私自身はそんな要因でクランクベアリングをぶっ壊した事って一度も無いのですが、昔は

分解出来るベアリングをスライス加工してDio用寸法にしてみたり色々やってまして。

が、正直そこまでする程のメリットは無い、と分析したので現在ではFNマシン等以外で

レギュレーションの縛りが無くとも普通に純正クランクベアリング使ってます(笑


クランクケースの破壊例 コチラは私の物ではありませんが、SHOPに腰下O/Hを依頼し、台湾クランクベアリングの挿入も頼んだ方の腰下になります。

O/H後、わずか100km程度で異音が発生しておかしくなったので私に見て欲しい、といった件でしたが、ベアリングを外すと見事なまでにクランクケースを破壊されていました。

ベアリング挿入穴の外周部に、ベアリングを斜めに叩き込んだ形跡の「スジ」が見て取れますね。

こうなってしまってはもうクランクケースの再利用は不可能で、捨てるしかありません_| ̄|○


これは一度斜めに叩き込まれてしまったベアリングを一度引っこ抜き、再度無茶苦茶な叩き込みで

ムリクソ収めていたといった形跡でしたが、これをオーナーの方に報告して作業SHOPに問い詰めて

頂いたら、まさにその通りですごめんなさい、との事でした(汗

…O/Hを依頼してるのに破壊してどうするんだよ、といった悪例ですが…こういった所も熱膨張等で

きちんとクランクベアリングを入れないと一発で全て台無しになる、といった「作業が不味い」一例です。


ホンダサービスマニュアルにある「打ち込み」は、あくまで「新品のクランクケースに対して」

ハメ殺しの様なスタンスで取り組む手法ですから、そのあたりを誤解してもいけませんね。

…別に私、一般的な手法が全て間違っているとまでは言いませんが、他が出来るからと言って

2stスクーターの中でも特別シビアなDio系に「ナメてかかると」こういった事例も出ます、と

言いたいのはいつもの事ですね(笑


台無しの台湾ベアリング で、この腰下の分解時のクランクベアリングがコレになります。

お手本の様な保持器粉砕例ですが、作業で無茶すると簡単にこうなるのが2stDio系なんですよ。

こんなパターンでは運用方法もクソもなく、クランクケースすら再利用不可能なまでに痛めつけてしまいます…

いかなる理由があろうとも、一度クランクケースに挿入したベアリングを再利用するというのはご法度ですからね。



このクランクベアリングは一時流行った台湾製ですが、無茶して再利用して組んだらそりゃすぐ壊れます、と(笑

仮に組み付けて一度も実働させていない腰下だとしても、すぐに割ってクランクシャフト側にベアリングが残っても

ギロチンプーラーでベアリングを引き抜いてしまったら確実に玉と軌道面に圧痕が出来ますからそういった場合は

ベアリングの再利用は出来ません。


よほど運が良ければ話は別ですが…私以前、クランクシャフトに新品ベアリングだけを挿入し、わざと

すぐにギロチンのプーラーでベアリングを引っ張り出し、それをベアリングメーカーに勤める人に

「予備知識なし」にてベアリング状態の検分をお願いした事があるんですよ。

当然、プロの目(感覚)から見てもそんな取り外し方を行ったベアリングは明らかに玉に圧痕が出来て

いるので駄目になっている、という意見でしたからねえ。

これがただの市販6204とかならいけるかもしれませんが、ホンダ2st系スクーターの特殊なクランク

ベアリングはそういった面でも気遣いは要る、とまとめた所で余談をおしまいにしますね(笑


…なおこういった点を知識として知っていれば、「今の時代に手に入る」得体の知れない中古腰下なんて

仮に何の点検もせずそのまま使うとなればクソの役にも立ちそうに無い、なんてのは今更言うまでも(以下略


・クランクシャフトの点検について


さて、次はクランクケースではなくクランクシャフトの良し悪し、と言いますか点検方法みたいな

物をざっと記してみたいと思います。

レーサーであれば、と言いますかレーサーではなくともホンダ2stスクーターの純正クランクシャフトは

中古品の場合だと



「材質的」に他メーカー品よりも柔らかい為


「クランク大端ピン部におけるクランクウェブのズレ」のみならず


クランクウェブから生えている「シャフト」が曲がっている場合が多い


といった点が大前提となりますね。

これはJOG系とかではまずありえない事で、「シャフト部分」そのものをひん曲げようとしてもなかなか

曲がる物では無いですが、2stDio系の場合だとドライブフェイスの取り付け、取り外し作業等にて

無理な力を与えると簡単に「シャフト部」が曲がってしまう、というのもいつも記している通りです。

あ、もちろん純正新品ではそんな曲がっているモノなんて私は見た事ありませんが、中古だとかなり

よくあるので私がホンダクランクシャフトの再利用を奨めないのはこれが最大の理由になっていますよ。


ちなみに点検方法のひとつの目安として…駆動系やフライホイール等を全て外し、プラグを抜くか可能で

あれば腰上も外して圧縮を0にし、ドライブフェイス、ボス、ランププレートのみを装着します。

かつフライホイール取り付けナットを入れておき、その状態でエンジン腰下が動かない様に固定した上で

電動インパクト等を用いてフライホイール側ナットを回し、ドライブフェイスの外周辺りを目視すれば

目に見えてぐわんぐわんと回っている場合があります(汗


回転軸という物は支持点から遠ければ遠い程、ブレや曲がりが大きく出る物なので、仮にシャフトの

末端が0.05mm、すなわち5/100程度ブレていたとしてもフェイス末端部だと意外と目視でも分かるものです。


…現実を直視したくない、といった奇特な方以外は一度はこういった手法でクランクシャフトの「現状」を

確認してみると良いかと思いますよ。

中古エンジンなんかその最たる例で、出所も運用も分からない物だと…クランクシャフトが真っ当に

許容範囲内でブレずに回転しているモノはまずありません。

とはいっても、鉄板のプレス整形品であるドライブフェイスも「歪む」事はあるので、そういった可能性も

合わせて目視する場合の中をしておいた方がベターでしょう。

(可能であればシャフト末端にピックゲージかダイヤルゲージを当てるのが良いですが)


これはある程度の「クランク大端ピン部の異常」である「通常のクランクブレ」でもこうなりますが

あまりにもドライブフェイス側シャフトの振れが大きい場合、「シャフト部」が曲がっている可能性を

疑った方が良いです。

純正基準においてのシャフト左側の振れ限界、となればクランクシャフト中心部から左に70mmの

地点で「15/100」となっていますが、実際にはその位置でそこまで触れていると駄目どころの騒ぎでは

ありません。

左側の「ベアリング挿入点」基準だとクランクシャフト中央部から20mm〜程度は距離がありますが、

そこを支持点として見るとわずか50mm先での計測になるので、そこで0.15mmも振れていたら

現実としては完全にシャフトがひん曲がっているレベルですね(笑


ちなみにフライホイール側、「右側」のシャフトは支持点から計測点までがかなり近距離なので

コチラが大きくブレている、となればかなり問題アリになります(汗


…とはいってもこれは実際にクランクシャフトを摘出してから色々と計測しないと分かりづらいのですが


一般的な「クランクシャフトのブレ」とは異なり


「シャフト部の曲がり」まで勘定に入れないと


2stDio系はクランクシャフト精度&状態の良否の見極めが出来ない


という…ホンダ2stスクーター系統、特にDio系ならではの特殊な事情がある、という点は絶対に

忘れてはいけないんですね。


ちと極端ですがいつもの下手絵で記しておくとこんな感じです↓


「ブレ」とは異なる「シャフト曲がり」


とまあ、ドライブフェイスナットを外すのに適当なホルダーを使って工具を足で蹴ったりすると

シャフト部が一撃でオシャカになる事も「多々」ありますし、電動ではなくエアインパクトを考え無しに

「締め付け」に用いた場合も同様なので、少なくとも中古エンジンのクランクシャフトであったする場合は

そのまま運用するのは結構ヤバい、という事にもなります。


これ、普通のバイクの単気筒クランクシャフトの様に、でっかいクランクウェブからそこまで長くない

シャフトが生えている様なタイプならば、物理的にシャフトが曲がる事はほとんどありえないので

「大端ピン部のブレ」のみで20/100とかブレていても修正は出来ますが、スクーターの特殊なクランク

シャフトの場合、特にホンダ系だと上図の様になっていた場合は内燃機屋さんとかでも修正は出来ません。


と言いますか…基本的にスクーターのクランクシャフトって内燃機屋さんやカート屋さんとかでもかなり

検芯や芯出し修正を嫌がるものなんですが、それにはこういった構造的な理由があるからなんですね。

…で、こういった「シャフト曲がり」が発生するといったパターンを知識や経験で知らない場合だと

プロが検芯しても何がどうなってるのか分かりづらいので、検芯や芯出しを依頼するならば「ホンダ2st

スクーターのクランクシャフト」によほど慣れている所に依頼しないといけません。


が、それでも「シャフト」が派手に曲がっていたら何をどうやっても再利用は無理ですけれどね_| ̄|○

「専門のプロ」でも知識が無いと分からないといった一つの特殊事例です。

ホンダスクーターのクランクシャフトが材質的に柔らかい、柔軟である、といった点をその場で見極められると

いった達人なら話は別ですが、そういった前提も無いのに他のバイクと同じ様な先入観で作業を行ってしまうと

かなり不味い事になりますしね。


もし、ここを読まれている皆さんの中で、専門業者に芯出しを依頼したのに不可能だと言われた、といった

経験がある方が居れば、前述の様な可能性があった事は否定出来ないと思いますよ。

…なお、シャフトがひん曲がった状態で左右末端部のみを基準として芯出ししてしまった場合、そのまま

組み付けても真っ当に回っている様には見えない、というのは(以下略


そして運良くシャフトの曲がりが無く、クランク大端ピン基準の芯出し修正のみで再利用が可能に

なりそうなクランクシャフトであったとしても、純正中古の場合は大端ピンの圧入が緩かったりしても

元の木阿弥なので、こればかりは実際にシバいてみないと判断のしようがありません。

クランクピンの圧入が緩くなっているクランクの場合、クランクピンを抜いて組み立て直してもまず

キツくはならないので、昔のホンダクランクの様にオーバーサイズ大端ピンでもあれば話は別ですが、

このあたりも純正中古クランクシャフトの再利用を難しくしている要因でもありますね…


もちろん言うまでもありませんが、私が自前で検芯や芯出しを行う様になったのはそういった理由が

多々あるからこそでして、2stスクーターのクランクシャフトかつホンダ純正品の中古品とかになると

その構造に詳しいスペシャリストでないと真っ当な分析が出来ない、と言うだけの話になります(泣

あ、もちろん検芯作業とかなら私で宜しければ随時承っておりますので必要な方はご一報下さいな。

…一応、こんな私でもホンダ2stスクーターのクランクシャフトに関してはもう嫌になる程様々な状態の

モノを見て来ている上に無理難題の検芯&芯出しもかなりヤってますんで、ね(笑


で、実際に摘出した中古クランクシャフトを再利用する場合だと、両端支持計測でもベアリング挿入点の

支持計測でも、色々なところを計測した上で何がどう悪いのか、を分析しないといけません。

と言いますか2016年現在でライブDio-ZXの場合、初期型ZXのクランクシャフトはすでに欠品ですから

パワーに多少優れる初期型ライブDio-ZXエンジンをFN仕様として運用するのは限度がありますが…

それでも、劣化が少なくシャフトの曲がりも許容範囲内であれば、修正してでも使うべきでしょうね。


私自身、FNエンジンのストックとしては初期型ZXの物は現在使っている1機しかなく、予備のクランク

シャフトにおいてももうサビが出ている様な物が1本あるだけです(泣

この記事を書きながらですが、丁度先日2016年から復帰させたメインFNエンジンの腰下をO/Hしたのですが、

元々は新品の純正クランクシャフトを組み付けた状態から3000km程FNマシンとして運用した状態にて、

クランクシャフトのブレそのものはすでに左右共に3/100位は出てしまっていました。


レーサーだと駆動系と言うかフェイスナットの脱着回数がかなり多いので、その分気を遣ってやらねば

なりませんが、それを差し引いても運用上で多少はブレやシャフトの曲がりという物は出てきます。

ちなみに私のクランクシャフト、今回は何が悪かったのか左側シャフトの末端部では5/100もブレが

出ていたので、これはおかしいと思いじっくりと計測すると案の定、左側シャフトが2/100弱ですが

「曲がって」しまっていたというオチでしたよ。


が、こういった場合だとまだ許容範囲なので、企業秘密ではありますが


クランクシャフトをケースに組み付けた状態においての


「末端部」のブレを無くしていく修正方法


にて芯出し修正を行い、ケース側には一切の加工等無しでシャフト末端部のブレを抑える事が出来ました。

クランクシャフト&クランクケース組み付け後、末端部分を計測した動画がこちら↓になります。(Youtube)



クランクシャフト単体ではなく、組み付けた状態で末端計測が1/100位なので充分な許容範囲ですね。

別にもっと細かな目盛りのあるゲージもありますけど、これ以上計測しても無意味なので(笑

計測部分はギリギリの円筒部の末端、支持点から一番遠い所なのでココの計測でこれなら上出来です。

とはいってもクランクケースの左右の精度が悪い、要はハズレケースだとこうはならない事も多く、

微細なシャフト曲がりをクランクピン部で許容出来る様に修正しつつ、かつ真っ当に組み立て、「最初」の

シャフトガタも出せるというのは結構なレアケースである、とお考え頂きたく思いますです…

私も今回は上手く行ったのでわざわざ動画撮ったんですが、厳選した当たりクランクケースで

あるが故の手法でもあった、という事でよろしくです。

当然、新車時からハズレのクランクケースだと曲がり無しの新品クランクを組み付けてもこうはなりません。


ちなみに余談ですが、あくまでこれはFNやFPマシン等、クランクケースやパーツ類に一切の加工等が

禁止であり、手を加えてはいけないレギュレーションがあるからこそ「厳しい」のであって、一応は

クランクのセリを出しやすくする修正加工等も世の中には存在する、といった点は付け加えさせて頂きます。

…私はあまりやりませんし、後述する「本当の見極め」を行えばそこまで必須でもない、と考えてますんでね。


さて、クランクシャフトのあれこれで長くなってしまいましたが(笑

とにもかくにも、ホンダ2stスクーター系のクランクシャフトは材質的に柔らかいので単純な検芯のみでは

ブレなのか曲がりなのか分かりにくい、といった点が最大のポイントになる、という事です。

かつ、組み付けに関しては真っ当にベアリングとウェブのクリアランスを測りながらでもきちんとクランク

シャフトを「引ける」作業が出来るのは大前提としても、ケースの良し悪しによってはどうやってもイマイチな

結果になる事もある、と…


が、クランクシャフトは新品中古、純正社外を問わず点検、検芯は絶対にやっておかないと他の全てが

無駄になりますし、レーサーではさすがに言う人は居ないでしょうがクランクベアリングにいくら気を

遣ってもクランクシャフトが駄目では何の意味も成さない、という事です。

実際、曲がったりブレたりしている中古クランクシャフトだといくら気を遣って組んだり特殊なクランク

ベアリングを用いた所で、クランクベアリングの寿命が変わらないどころか短くするだけですからね。


昔、安価な腰下作業工具が世の中に出回り始めた時にはクランクベアリングさえ交換していれば安心、と

いったスタンスの方も多数見受けられましたが、クランクシャフトがひん曲がっているのではいくら

ベアリング交換をやってもやっても効果は薄い、というのが現実だったりします。

むしろ、ひん曲がっているクランクシャフトで無理を掛けて運用する事により、クランクベアリングの

寿命を縮めている、というのは当サイトを熟読されている方々であればお分かり頂けるかと思いますよ。


今の時代であればVブロックとダイヤルゲージでもそんなに入手難易度が高い訳でもありませんし、

検芯台を自作する人とかもおられるので、自分で腰下をバラせるLVの方であればそのあたりを

追求してみても面白いかなとも。


・クランクオイルシールについて


さて、次は「クランクオイルシール」について少々記しておきたく思います。

とはいってもさすがにコレは腰下の当たり外れには関係ありませんが、最後に述べる見極めの事柄にて

ちょいと重要な点が絡んでくるので…


で、このクランクオイルシールですが、回転軸のシールなので内径側にはリップがあり、そのリップの

「外側」にはバネが入っており挿入軸に対するテンションを掛けています。

そういった仕組みなので、金属製のクランクシャフトに対してゴムを押し付け、クランクケース内の

混合気が漏れ出さない様になっているのですが。

これってゴムといえばゴムなのですが…


新品を組み付けた場合


完全に馴染むまでには


結構な時間(稼働時間)が必要である


といった特性…と言いますかある意味当たり前の構造をしています。

詳細はオイルシールメーカーのサイトでシールの構造でも調べて頂きたく思いますが、私がここで

特筆したいのは



腰下をO/Hし


クランクオイルシールを新品交換した場合


多少の走行距離では完全にゴムが馴染みきらず


多少はクランクシャフトの回転抵抗になっている


という事になります。


…ただのゴムがそんなに硬いのか?と思われる方もおられるかと思いますが、これがなんとも

「意外と」馴染みにくいんですよね。

一例として、一度新品のクランクオイルシールを組み付けた腰下を運用し、100km程度走行した後

腰下を割ってからオイルシールを再利用可能なレベルで摘出した後、改めて組み付けてみるとまだまだ

シールのリップ部分の馴染みは出ておらず、クランクシャフトを回した時の抵抗はありました。


逆に、腰下をきっちり組み立てた状態で「クランクオイルシールを入れない」状態にてクランクシャフトを

手で回すとくるくる回りますが、「新品のオイルシールを入れると途端に回転が重くなる」というのも

自分で腰下を組まれた事のある方であれば経験済みでしょう。

これも当然の話でして、クランクシャフトやベアリングが云々、ではなく新品のオイルシールは

いきなりは馴染まない、というだけの話になっていますね。

多少組み方等が不味くて、オイルシールを入れない状態でのクランク回転抵抗が重ったるいといった

状態の「重さ」と、ちゃんと組み付けられた上で新品オイルシールを入れた状態の「重さ」って結構

近いモノがある、と表現すれば分かりやすいでしょうかね。


なおFNマシンのエンジン、ノーマルパワーにてサーキットでの全開走行を100km程度行う位ではなかなか

クランクオイルシールの馴染みは出づらいのですが、これがSS1/32mileマシンとかの高回転型エンジンだと

50mの距離を数十本走る程度でも結構馴染んできますよ。

そりゃノーマルの倍近い回転数で運用していれば馴染む、と言いますかムリクソ馴染んでくるのは

これまた当然なのですが、FNマシンやノーマル風味車の様なエンジンの場合だと、アイドリング慣らしを

そこそこ行った上で100km程度走った位ではまだ足らない場合もある、という事です。


意外と馴染みにくいクランクオイルシール …こんなゴムシールでも裏にスプリングがあり、結構な力で軸を締め付けている、というのがポイントでしょうか。

組み付けて即座に最高性能を発揮する訳ではない、というのは機械である以上、ここに限らず色々な所に存在していますが。

世の中ではそういった部分の馴染みをしっかりさせる事を「慣らし」と呼称しているのは言うまでもありませんね。

「慣らし」ってのは行わずとも問題が出ない事も多々ありますが、「行わない方が良い」なんて事例はまず無いのが現実です。


なお、古い車種だと腰下を割ったりクランクオイルシールを取り外したりした場合、シールのリップ部分が

当たっていたクランクシャフト側の部分が凹んだスジ状になって磨耗している、なんて事もありますし。

回転体からの「漏れ」を防ぐ為のシールはOリング等とは異なり、結構なテンションが存在する物というのは

こういった事例からでも読み取れますね。


ちなみに余談ですが…新車から一度も腰下をバラしてない車両にて、どうにもアイドリングがおかしいとか

全般的な不調があった車両があり、何をメンテしても直らない、クランクオイルシールも目視では漏れも

あまり無く、原因が分からず腰下を割ってみた所、オイルシールのリップ部分の裏の

スプリングが脱落していたといった、ワケの分からん「初期不良」ってのを聞いた事があります(笑


コレは私はそういった事例に遭遇した事は無いのですが、新車からずっと不調だった、といった点を

鑑みればメーカーの組み立て時にクランクオイルシールを真っ直ぐ無理矢理押し込んでしまっていたのでは、と

私は分析します、と言いますかそれ以外に原因が考えられないです(汗

あ、こういう軸に入れるオイルシールってのは、最初の段差を「越えさせる」時には、リップが裏返ったり

しない様に回転させながら押し込むのは基本ですが、そうしないとスプリングが外れても全く感覚では

気付かないでしょうね。

シールガイドを使えない、使わない様な箇所であればシールってのは最初から真っ直ぐ押し込んじゃ駄目ですよ(汗


とまあ、クランクオイルシールって新品だと意外と馬鹿に出来ない回転抵抗がある、といった点はなんとなく

お分かり頂けたかと思うのですが…

これ、何でも良いので実働していた中古エンジンを用い、腰上や駆動系、フライホイール等を全て外してみて

クランクシャフトだけを手で回してみれば、どの位の「軽さ」で回っているのかが体感出来ますよ。

(※当然ですがクランクオイルシールは左右共外しちゃダメです)

新品組み付け後の腰下や、あまり距離を走っていない腰下のクランクシャフトを回すのとでは全く感覚が

異なる事が分かるので、馴染みきっている「実働中古」の感覚も手で覚えておけば損はしないです。


…とはいっても、すでにオイルシールから汁が漏れた形跡があるレベルだとさすがにリップの意味を

成して無いのでそこまで劣化してる物は役に立ちませんが、「馴染みきっている状態」というのは

ド新品とは大きく異なる感覚になっている、といった点は忘れてはいけませんね。



・腰下の見極め方の「タイミング」について


さて…ここまでで一応のクランクケースとクランクシャフトの良し悪しのあれこれを羅列してきて

みましたが、基本的にはクランクシャフトはともかくケースについては「組んでみないと分からない」と

いった面が大きいのが現実だったりします(汗


実もフタも無いじゃねえか、と思われるかもしれませんが…「スクーター改造」コンテンツ内にある

「私的クランクケース組み立て方法」の最後の方にも記していますが、最低限度きちんとした構造や作業の

方法を自身で「理解」していないと分析もクソもない、とも言えるんですよ。

「知っているだけ」で上手くいく程2stDio系は甘くありません(笑

これ、いくら当たりっぽく調子の良いケースだったとしても、組み付け方がおかしければいつまで経っても

パワーが出ませんし、実際私も外注作業にてそういった経験もあったりしますんでね。

特にFNマシンカテゴリー(FPもですが今時需要無いでしょう)といった、一切の加工修正が出来ないという

レギュレーションのあるクラスでは、組み付けのウデも大切ですが当たり外れの見極めも大切、と言うのが

なんとも矛盾をはらんでいますしね_| ̄|○


とまあ、そんな事は置いておいても…仮にクランクケース、シャフトをO/Hした場合であれば組み付けの

直後にクランクベアリングのシャフトガタをチェックし、シールを付ける前の回転具合も満足行く物に

しておくのが前提にはなります。

で、その後オイルシールをくっつけエンジンを組み、車体に乗せて慣らしを始める訳ですが。

…これ、サーキットFNユースもしくは一般ストリート使用でもノーマル風味エンジンの方の概念として、


「腰下の慣らし」ってどれ位の時間で終わると考えられてますか?


実はコレ、ここにこそ「当たり外れ」の判断を誤らせる最大の罠が潜んでいたりします。

前述のオイルシールのコーナーにて、新品オイルシールにおいてはノーマルエンジン程度の運用回転域&

時間では100km走行しても馴染んでない事がある、と記しましたが。


これが仮に、クランクシャフト&ベアリングをケースに組み付け、組み付け後にあまり適正なガタが

出ていなかったとした場合、オイルシールとは比較にならない位に「クランクやベアリングが

馴染むまでの時間、距離」ってのは長いんですよ。


私の経験上、1000kmとかを走ってもまだ「ガタ」はほとんど現れず、もっともっと走ってからやっとこさ

適正な「ガタ」気味になった、すなわち真っ当な「慣らしを終えた」という事もあります。

…ここまで読まれた方であればもうお気づきだと思いますが、


ノーマルレーサーのFNマシンのエンジン(腰下)であれば


組み付けた後、多少サーキット等を走らせた程度では


腰下本来の慣らしが終わっていない事が多く


その時点で良し悪しを決め付けてしまうと


まだ「馴染まない内に」良否の判断を下してしまう事になる


と、こういった事が結論になります。


機械部品である以上、ゴムですら馴染むのに時間が掛かる物ですから、クランクベアリングに

してみればいくら挿入時に真っ直ぐ入っていたとしても、軌道面とボールの当たり具合等は

そうそう簡単に馴染みが出る物ではない、と考えてみればよく分かると思いますよ。

クランクベアリングの場合、隙間的にはC3やC4には設定されては居ますがその隙間の余裕をさらに

上回る位の組み付け状態の齟齬、ってのはどうしても発生してしまう場合もあります。

それをじっくりと解決させるのが「慣らし」なのであり、仮に当たりのクランクケース等を用いて

いたとしても、走行10km程度から全力全開の最大効率が出せる、という物では無いんですね。

ただしエンジンパワーのあるチューン仕様の場合だと無理矢理馴染むのでそうとは限りませんが。


サーキット走行の場合、どうしても街乗り運用よりは実働時間、走行距離が稼ぎにくいですから…

私はスピードメーターを撤去するのは無駄の極みだと考えているのは皆さんご存知のはずですが

それには「オドメーター」も最大限活用する為、といった理由もありますので(笑

別に周回数とコース1周の掛け算でも走行距離は出ますが、オドメーターをアテにすると忘れないので

私はこっちのが好きだったり。


で、ここで余談と言いますか、ちょっとした昔話になりますが。

昔のFNクラスの全国区でのネタバレとして、FNトップライダーの使っている腰下というのは実際は

マメなメンテで維持した物とかではなく、じっくり馴染んでO/Hもしていない街乗り車の中古の腰下が

一番調子が良かった、という傾向が強かったというネタバレがあります(汗

むしろ下手なO/Hは悪手、といった風潮がありましたし、実際私もそう考えた時期もありました。

(※このあたりはもちろん全員が全員では無いでしょうが…)


これは文字通り通常運用にて、ノーマルエンジンとしてしっかり慣らし切っており、確実に性能が

出せているという前提の中古車両に載っていた腰下を使ったからこその傾向ですが…新品パーツを

組み付けたり、O/Hした後にはどれだけの慣らしを行ったのか、といった視点は欠落しています。


これは今でこそ言えますが、サーキットで何千kmも走らせるのはかなり時間が掛かりますが、そういった

所の慣らしをきちんとやった上で判断を下した例がどれだけあっただろうか、と…

月日の経った今では私としてはそういった分析結果となっています。


結果的に、「FN等の世界で」当たりと言われるケースというのは普通に組んでもクランクシャフトに

適正なガタが発生しており、慣らしをほぼせずとも最大に近い性能を「最初から」発揮出来る物が

「手っ取り速い当たり腰下」と言われていただけ、といった解釈になります(泣

もちろん組み付け直後にしっかり各部が収まる方が慣らしも少なくて済みますし、性能的に良いといえば

良いし速い傾向はあるのが確実なのですが、それを差し引いても「慣らし」の終わらない時点での

判断はちと早計であったであろう、という昔話になりますねえ…


かくいう私も、FNエンジンにてクランクシャフトを新品購入して芯出しに出し、かつ組み付けまで任せた様な

お金の掛かった腰下がさっぱり走らず、ドライブフェイスやギヤ等まで新品をふんだんに購入して交換して

いっても全く改善せず、結果的に後に自分でバラして「クランクケースだけ」を交換して他は全て同じパーツで

組んで慣らしたらバッチリだった、という阿呆な話もあったりしますよ(爆


ちなみにこの場合は組まれ方もちとイマイチだったのですが…こういった場合だと回転部分の摺動抵抗が

無茶苦茶にキツいので、数周走ると駆動系がぶっ壊れてるんじゃないか?と思える程の酷いタレを

誘発してしまいます(笑

あ、ここでモノのついでに「タレ」について少しだけ記しておきたく思いますが。

またいつかコンテンツでまとめようと思いますがさわりだけ記しますと、よく言われる「タレ」と

いう物は、再加速時に変速回転数が規定の所まで復帰せずに加速出来ない、といった状態を指すと私は

解釈しています。

これはもちろん駆動系パーツが劣化でボロかったりしてもそうなるのですが、前述の様に 腰下の

マズさによる原因があってもタレは発生するんですよね。


何故かと言いますと…完全に慣らしきっていないクランクシャフトが「重い」のと同じで、熱が入る

事によって各部のクリアランスがみっちみちになり、ピストンを叩く力がクランク回す力にイコールでは

変換されにくくなっている、という単純な話です。


スクーター特有である「駆動系のタレ」は除外しますが、通常で言われる「エンジンのタレ」というのは


ベアリング等、回転部分における摩擦係数と


摺動抵抗の増大により


燃焼圧力波がピストンを叩く力が変化せずとも


クランクシャフトを回転させる力に多大なるロスが発生しているから


なんですよ。


よく、ピストンとシリンダーのクリアランスが減少する事による抵抗を

「エンジンの熱ダレ」と表現する方もおられますが、これは本当は

ちょっとおかしい理論なんです。

もちろんそういった状態も、「タレ」の要因としては0では無いでしょうが、数%のレベルでしょう。


だって、そんな状態に陥るとすればすでにオイルによる油膜がほとんど無い状態になっており、状態と

しては焼き付き寸前の状態である事に他なりません。


仮にその説が正しいとすれば、ピストンとシリンダーが擦れあってかなりパワーダウンを感じる程の抵抗に

なっている、となれば次回腰上を開けてみたらかなりのキズか強いアタリが一杯無いとおかしいですよね。

運用として通勤等で1ヶ月に25日、毎日乗るとして朝と晩に1回ずつもさ〜っとタレを誘発させていたとしたら

1ヶ月に50回もピストンとシリンダーが「焼き付かないギリッギリの所だが、抵抗にはなるレベルの擦れ合い」

長時間発生し続けている、という事になってしまいますが。

もしもそんな状態を維持しているとすれば、運よく完全に焼き付きロックしないレベルのシビアな所を毎日毎日

繰り返しているのでしょうか?


もし本当に常にそんなギリギリの状態であった場合、そんな状態を繰り返していたら何かの拍子にガツン、と

止まってしまう可能性の方がはるかに高いでしょう。

で、そんな運用を毎日続けた上で腰上を開けても、明確なロックした焼き付き跡は無い、というのが大抵の

オチになりますけれどね(笑

なのでいくら強制空冷エンジンだとしても、腰上が明確にヤバくなってタレが発生している、といった状態に

なっているのであれば、それはタレではなく焼き付き寸前であり、大抵の場合の「エンジンのタレ」というのは

腰上ではない、という事なんですよ。


…本当に腰上の摺動抵抗で「タレ」が発生していると思うのであれば、オイルを過剰に食わせてみたり、

分離給油エンジンであるならば混合ガソリンを給油したりして走ってみればよく分かります。

これは油膜を過剰にこしらえてみるのと同義ですから。

そしてそれで長時間運用時のタレが無くなるのであれば誰も困りませんので、ね(笑



と、話が反れましたがスクーターの駆動系のパーツはボロければたやすく「タレ」の要因になりますが、

前述の様に、腰下が不味くても本来の意味での回転部分の摺動抵抗によるタレが出てしまいます。

しかし、仮にタレが発生している腰下でも、それは組んでから時間が経っていない場合であればさらに

走行距離を重ねていく事により、各部の馴染みが出て症状が改善する可能性も0ではありません。

…が、そこまで酷い外れ品もしくは組み付け方が悪い腰下だと、ライブDio-ZXの場合だと完全な馴染みが

出る前にクランクベアリングが根を上げてぶっ壊れてしまう事もありますけれども(経験済み


最後に、ざっとした結論としては



各パーツ単体でのチェック、選別は当然としても


クランクケースに関してはFNマシンである限りは


「組んでみないと分からない」傾向も確実にある上


「組み付け方」は間違いの無い手法が大前提であっても


それなりの長距離を走行させた後で無いと良否の判断は出来ない&


するべきではない



という事になります。


ただし、



いくら「当たり」のクランクケースを用い


程度良好で芯出しOK&曲がりなしのクランクシャフトを


用いてエンジンを組み付けた場合でも


実働負荷をかけた慣らしは必要であり


慣らしをある程度行った後では


クランクの「ガタ」やオイルシールの具合といった


「状態」が変化する事もある


ので、早急な状態判断は宜しくない、と言った点も付け加えておきます。


…使用パーツが「当たり」であり、きっちり組み付けられたと思っても「実走負荷」での慣らしはある程度

行ってから様子を見ないと駄目です、という事ですね。


サーキットユース&レースといった運用方法では、どうしても短距離での馴染みや整備後すぐの性能発揮が

求められますが、FNの様なノーマルエンジン&パワーではなかなか馴染まない、という事で…

ピストンリングや新品シリンダーにしても、組んですぐ全力発揮、と言う訳にはいかないのもある意味では

同じ理由になりますし、駆動系にしたって完全に適温まで温まり変速回転数が落ち着くまでは数周は

走らないといけない、といった暖気的なモノも広義の意味では同じと言えますね。


とまあ、これを記している2016年ではもはや2st50ccのFNマシン、といったカテゴリー自体もかなり

形骸化してしまっていますが、いつもながらですが街乗り運用の方も含め何かの参考になれば、と

思いますです。

…今回はココを「スクーターレース」のコンテンツとしましたが「スクーター改造」でも問題無(略



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