FN仕様Dio レーシングハーネスの作成方法+α



さて、今回はレーシングマシン特有のチューニング、ハーネスや電気関係について触れたいと思います。

レギュレーションで「ハーネスの作成・加工はOK」となっていますので、保安部品の取り外しと合わせて色々メリットがあるチューニングですね。

電気関係ですと個人個人により色々な理論があるのですが、ここでは私が行っている方法&理論をご紹介したいと思います。

もちろん、街乗りマシンにも応用可能な理論を交えてご紹介していますので、レーサーの方に限らずお役立て下さいね。



さて、まず初めに「メインハーネスの簡素化」を主眼とした方法を解説致します。

レーシングマシンの整備性を考慮し、なおかつ色々な電気的ロスを少なくするための方法ですね。

もちろん、ストリートマシンにも応用出来ますが、その場合ライト等のハーネスまで取り去ってしまってはダメですよ(笑


私のDioはFN仕様ですので、最低限の「点火」&「CDIの動作」に関わる部分だけのハーネス作成すれば良いですね。

しかし、ライブDioの根本的な設定としまして、バッテリーを取り外せないという物があります。

私、電気関係に詳しくは無いので完全な自信はありませんが、まずライブDio系は「バッテリー点火」では無いんです。

すなわち、バッテリーが無くても点火をさせる事は可能なんですね。


しかし、実際にバッテリーを外して走行すると、CDIのパンクが起こる事が多々あるんです。

これは、レギュレートレクチファイアで整流された電流が、バッテリーを介して何らかの抵抗?を受け、

高回転域での大電流が発生する状況でもCDIにダメージを与えなくしている・・・のだと推測しています。

ちなみにバッテリーがほぼ死んでいても、装着さえしていればデジタルCDIでもCDIのパンクは起こりませんので…

やはりバッテリーが何らかの役目を果たしている事は間違い無い模様です。

…ですのでバッテリーに代わる物としまして、電解コンデンサ等、つまり超巨大な「バッテリーレスKIT」を作成しての実験もいずれ考えております。

(現在では補助的に使用しておりますが、果たして「電気的レスポンスの良いバッテリー」的な電解コンデンサ&バッテリーレスで、過電流に対する整流(整圧?)効果は現れるのでしょうか?)

追記:↑これは無理でした(笑

電気抵抗的がほとんど無い電解コンデンサのみでは、過電圧の元になるのは間違いありませんのでご注意下さい。


…本来はバッテリーが無いと全く点火をしないのが本当の「バッテリー点火」ですが、ここでちょっと補足とか。


当サイト内では便宜上、バッテリーの有無が点火に影響する物を「バッテリー点火」と表記しています。

そしてバッテリーが無くとも、コイルの発電で直接CDIを駆動させて点火を行うのを「マグネット点火」としています。

が、本来のこういった「点火形式の区別」は、

「CDIを駆動させて点火を行う為の供給電力形式の違い」

で行う物です。

すなわち、ライブの様にコイルで発電されたAC電流がレクチファイヤで整流され、「DC14.4V」程度に変換されて

CDIを駆動している場合だと「DC点火」、対して3YKや縦型Dioの様に発電コイルで発電されたAC電流が

レクチファイヤを解さず、直接AC電流のままでCDIを駆動させる方式を「AC点火」と呼ぶのが正しいんですよ。

これは各車のハーネスの働き等を把握しないと理解が難しいですが、本来の点火形式の区別…

と言いますか判別とはこういった物である、という事も覚えておかれると良いですね。


前置きが長くなりましたが、ライブ系のハーネスの簡素化は、JOG系程には簡単には行かないのが現状なのです。

3YK-JOG系ですとバッテリーもレクチファイアも必要ありませんが、ライブ系はどうしてもそれらを残さないといけない為、非常に面倒くさい作りになってしまいますね…

それではまず、ハーネス全体の配線図をご覧下さい。

(画像をクリックしてご覧下さい。実サイズは960x720ですので一度保存されてから見る事をお薦めします)



ハーネス図





こちらが簡略化したハーネスの配線図になります。

なお、電装系は全く使えない仕様ですのでご了承下さいね。


※ACジェネレーターからの黄色線は「ライティング用」なので無くてもOKです。

「バッテリー充電用」の白線は残しておかないとバッテリーに充電が行なわれませんが、

走行毎にバッテリーを自分で充電するフルバッテリー点火仕様ならば必要ありませんね。


そして、このハーネス作りに必要な物ですが、やはり電流&信号の伝達率を上げるのが主目的ですので、出来るだけ「良い配線材」を使われる事をお薦めします。

私は、一般的に売られているスピーカーコードで作成していますが、出来ればオーディオ専用の配線材を使ってみたいものですね。高価ですが(汗

使用サイズは1.25sq・OFC銅線です。

太さが1.25sq(スケア)ですので、ノーマル線の倍近い太さを持っていますね。

そして電気抵抗値もノーマルの約半分の値まで減少させる事に成功しています。

パルス電流での抵抗値の軽減はとても大切ですし、CDIからIGコイルへのロスもかなり少なくなると思いますよ。

(ちなみにカプラー内の接続端子は、一般的に売られているカプラー専用端子でOKですね。)


ただ、スピーカーコードは基本的に「信号線」ですので、ライト等大電流の流れる場所への使用は絶対におやめ下さいね。

そのような場合は、きちんと耐電圧&耐電流の基準値をクリアした配線材でハーネスを作成しましょう。


それでは具体的な写真をどうぞ。


エンジン〜ハーネス3P ここはエンジンのローターベースから伸びる3Pカプラーですね。

メンテで分かり易い様、配線にテープで色を付けています。

そして写真がありませんが、ローターベース自体から伸びる配線もベース側で一度ハンダを取り去り、再度OFC銅線で引き直してあります。

この写真では分かりにくいですが、出来るだけハーネスの長さも短絡化させていますよ。

長くなればそれだけロスになりますので。




ヒューズBOX こちらは自作ヒューズBOXです。

マイナス側の配線(アーシング等)も一緒に入れています。

充電系統を殺している訳ではありませんので、メインヒューズは必要なんですよ。

…接点が一つ増えるだけでロスになるので本当は入れたくないんですが(笑

もちろん絶縁はしっかりと行い、最後にはハーネステープでぐるぐる巻きです。




CDI近辺 ここはCDI&メインキーの辺りですね。

一番配線がごちゃごちゃになる場所です…

ちなみにメインキーに刺さっているカプラー&端子がどうしても手に入らず、やむなくギボシ接続ですが(泣

…ちなみに全ハーネスを通して、カプラー以外ではここしかギボシが使われていません。

基本的にハーネスが合わさる所はハンダ付けですが、それでも電気抵抗のロスが気になりますね…




アース廻り こちらはノーマルのエンジンアース周辺です。

左側のボルトに止まっている線は、「フレームとエンジンを導通させるアース」です。

ノーマルハーネスですとフレームとエンジンがマイナス線で接続され、アースの電位がほぼ同じ位になっているはずですが、自作の場合フレームとエンジンをお互いアースで繋いでやる事を忘れてはいけませんね。

これをやらないとアースとしては致命的な欠陥になってしまいます。

(ノーマルではエンジンハンガーにゴムブッシュが使われ、そこで絶縁されてしまっているので)

もちろんアースを増設する場合も、抵抗値の誤差の少ないポイントを選んでアーシングするのが理想ですね。




メーター裏 …おまけでメーター裏の写真です(笑

私はスピードメーターに頼るレーサー(笑)ですのでメーターが付いてますね。

ライブDioだとどうせバッテリーを取り外さないので、燃料系とメーターの照明は残してあります(汗

…レース中のガス欠防止と、走行後にバッテリーをカットするのを忘れない為です。

(キーON時のメーター照明でのバッテリー接続確認ですね)



私はだいたいこの様な感じでハーネスを作成しております。

以前は高性能な配線材は使わなかったのですが、今回は色々あって使ってみる事にしたんです。

「管理人のPC」のコーナーを合わせて見て頂くと良く分かるかと思われますが、私少々「電線病」の傾向があるんですね。(笑


少々話が飛びますが、家電等でも壁コンセントから機器までの間で、安く作りの悪い電源タップや細い線材で、かなりの電圧降下が起こっている物なんですよね。

タコ足配線をしている機器ですとかなりの電気的ロスがあり、特に最近のPCの様な「瞬間的な大電流」を必要とする機器では特に顕著に現れるんですよ。

実質、タコ足配線&細い線材のタップでは、PCではかなりのパフォーマンス低下が起こりえますので。


電気と言う物は、流れる配線材が細ければ細い程、長ければ長い程、接点が増えれば増える程、分岐点が多ければ多い程、電流&電圧の低下は著しくなって来る物なのです。

そんな衰弱しきった電気では、正確なパルス信号の伝達や的確な電流の送電は望むべくもありませんね。

これはもちろんバイクや車にも言える事ですので。

「配線材」の太さ一つ取っても、「ノーマルが100点満点ではない」事を知っておけば良いと思います。

アーシングにしても同じ事ですよね。マイナス側の伝達効率「だけ」を上げたのでは意味は半分しかありませんからね。

ただ、ノーマルではマイナス側がかなり負けているので、マイナスアースの増設効果が現れるのだと私は思っています。



今回は本当に長くなってしまいましたが…基本的に街乗り車両でも、充電系統の配線材を途中まで交換するだけでも結構効果がある物なんですよね。

最近はアーシングだの高性能プラグコードだの色々ありますが、その前にノーマルハーネスの伝達効率を上げないと効果は半減すると思われますがね。

もちろんその前に、電気接点が汚れている等は問題外ですが…


これらの方法を実践しますと、確実に体感出来るほどレスポンスはUPしますし、目に見えてプラグの火花は大きくなります。

街乗りマシンに応用するのは少し知恵が必要ですが、レーシングマシンですと問題無く考えて置くべき場所だと私は思っていますよ。

特に改造範囲のほとんど無いFNクラスマシンでは、かなりの重要性があると私は思いますので…

電気のうんちくと合わせて、お役に立てて頂けると嬉しいです。




「スクーターレース」に戻る